やっぱりね

「本屋大賞2006」が決定。大賞はリリー・フランキー『東京タワー』ですと。  ふーん。  やっぱりな、というか、しょせんその程度の賞か、というか。2位が『サウスバウンド』だったんだなあ。残念。 「本の雑誌」の増刊で「本屋大賞2006」というのが出ていたわけだが、なんとも卑怯な編集後記がついている。なにこれ。  まずは、誰が書いてるのかね? イニシャルのひとつもついてないんですが?  そして内容はというと、開き直りの言い訳で終始している。第三回の結果に異議を唱える人もいるだろう。(略)百万部を超えた本よりも、五万、十万部前後の本を大賞に選出し、より多くの読者に知らしめるほうが創設の趣旨にあっている、とはいえるのかもしれない。 いえるのかもしれない程度ですか。いやてっきり、“あんまり知られてないけど、こんな名作・佳作があるんだよ、こういうのを売りたいんだよ売れてほしいんだよ”という趣旨だと思っていました。それ以外になにかあるとはちっとも。  で、そのあとは、投票するかどうか悩んだという投票者(でも結局票を投じているわけですが)のコメントを引用しつつ、うやむやにしている。百万部ではまだまだ足りない、もっと売りたい!という意志が集約されたのが今回の結果だといえるのではないか。ミリオンセラーがさらに桁ひとつ伸ばす勢いになることを期待したい。 ミリオンのさらにうえの桁って……、いやだよそんな、国民の1割もが同じ本を読むような国なんて! きもちわるい。たとえそれがどんなに感動的な本であっても、すばらしい本であっても。  冒頭の「はじめに」では投票者数が増加したということを誇らしげに語っている(1次投票者数368人、2次投票者数290人。2次投票には、候補作全11作を読まないと参加できない。ちなみに一番最初の“エントリー書店員”は548人)が、結局のところ、ほっといたって誰もが読むような本が候補となり、ハードルが低くなって結果的に投票者数が増えたということではないのか。  編集部(この「はじめに」は“本の雑誌編集部”名義で書かれている)では、この高いハードルをクリアして参加してくれた書店員に深く感謝したい。 という認識のようですが。あはは。  本屋大賞実行委員会は東京都の認可を受けたNPO法人になったそうですが(なんのために?)、ならば、対象図書を、《毎年12/1から翌年11/30までに刊行された日本の小説のうち、翌年12/31時点で発行部数が10万部を超えていないもの》、とでもしてはどうかと思うんですがねえ。  11月30日までに出てる本で第1次投票をおこない、上位から10位を第2次投票の対象にするわけだけども、年末の時点で10万部超えてたらそれは排除しちゃうの。5万部でもいい。  出版社も困っちゃうか。オレは本屋大賞ほしかったのに重版しやがって、なんて怒る作家も出てきたりして(それはないか)。  だってさ、「いちばん!売りたい本」なんて堂々と宣言しつつ、選んだのが100万部突破の大ベストセラーだなんて、普通に考えて馬鹿みたいじゃないか? ああ、ようするに書店員のみなさんは、内容より売れ行き重視なんだね家のローンも自動車のローンもあるもんね、って私なんかは思ってしまうわけですが。  いや、いじわるな言い方なのは承知している。他の賞だって、出版社の思惑とか作家の力関係とかが思いっきり影響しているんだから、本屋さんの本屋さんによる本屋さんのための賞というのがあったっていい。  でもね、だったらもうちょっと素直になってくださいよ。  もっと売れてほしいもっと売りたい、というお題目の裏には、当然「今はあまり売れていないけれど」というのが隠されているはずでしょ? それをなかったことにして、百万部だっていいものはいい(そりゃいいですけどね)、一家に一冊ひとりに一冊(それはいやです)とお祭りをするならば、素直に「売れてるものをもっと煽って書店業界の不景気を吹き飛ばしたい」といえばいいのに……。  さてお次は、図書館司書が選ぶ「いちばん!貸したい本」だな。図書館大賞。  今年の本屋大賞は、文学賞メッタ斬り!で取り上げてくれないのかなあ。楽しみにしてるんだけどなあ。  とおもったら、日経BPに場所を移したらしいです。さてこれから読もう。本屋大賞をメッタ斬り!  で、ざーっと読んできた。おふたりの緊急コメント。全面的に同意だあ。予想のときの『東京タワー』『さくら』についての豊崎さんの意見にもすごく同意だあ。  なんとなくすっきりしたので、寝る(笑)。...

本屋大賞

 2006年の本屋大賞のノミネート作品が発表されたそうだ(決定は4月5日)(なんだ1月のうちに発表されてたんですね。わたしゃアマゾンのトップページで気がつきましたよ、とほほ)。  ええと、今、一次通過ってことらしいが、要するに最終候補だよね? このなかから投票で本屋大賞が選ばれるんだし。二次投票とか書いてあると、じゃあ三次もあるのか三時のおやつは文明堂なのかなどといろいろ気になってしまうのだが。  候補作は本屋大賞サイトで確認できるが、こんな感じ。伊坂幸太郎 『死神の精度』伊坂幸太郎 『魔王』奥田英朗 『サウス・バウンド』桂望実 『県庁の星』重松清 『その日のまえに』島本理生 『ナラタージュ』西加奈子 『さくら』東野圭吾 『容疑者Xの献身』古川日出男 『ベルカ、吠えないのか?』町田康 『告白』リリー・フランキー 『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』 ふーん。  読んでいない『ナラタージュ』『ベルカ』『告白』についてはわからないが、ほかの候補作をみても、つまらんラインアップだなあという感想しかない。いや、作品が、ではなくてこの賞の対象作品として。  伊坂幸太郎がなんで2作品なのか。両方人気があったってことなのか。まあいいけど。でも今さら「これを売りたい!」って思わなくても売れてるのでは? 『県庁』についても織田映画化で話題になってるから、ほっといてもある程度は売れるでしょう。公開して1年ぐらいでテレビで放送して、そのころには文庫にもなって。  重松清も、そりゃ泣けるっちゃあ泣けるが、もうベテランだし堅調ですし。うまいなあとは思うが、みんなに知って欲しいというレベルではなかろう。 『さくら』、つまんないじゃん。俺は全然うけつけなかったけどなあ。それに、売れてるんでしょ?(20万部だってさ)   現時点ですでに3冠だか4冠だかの『容疑者X』にあげたいってのもわからない。5冠王6冠王とかめざすんですかね。  売れ行きでいえば『東京タワー』。これ以上売ってどうするのか。っつうかあれ、おもしろいか? 小説としてはできそこないじゃないのか?  とすると、俺が納得できるのは『サウス・バウンド』くらいなんだが、しかし奥田英朗の知名度はじゅうぶんありそう。でも、分厚いからと手を出しかねている人がいるかもしれないので、そういう人の背中を押してあげるにはいいかも、ぐらいな感じで。  本屋大賞って、サイトには《全国書店員が選んだ いちばん!売りたい本》ってあるわけですが、すでに売れている本をえらんでどうするんだろ。累計部数15000部未満とか、デビュー5年以内の作家とか、条件を限定したらいいんじゃないか?  このままだと、単に、今売れてて儲かってますんでお礼の意味も込めましてオメデトー、な賞になっていくだけのような。だったらいっそのこと実売部数で決めりゃいい(某宗教関係書籍がつねに上位を占めることになりそうだが)。    もうちょっと地味で無名で、でもいい作品(とその作者)を“売って”あげてほしいなあ。  でなけりゃ商売に徹して、いちばん売りやすい本、ってことで選んでください。なんだかこの賞のいやらしさが、最近ちょっと鼻についてきた。  以下で、大森望氏・豊崎由美氏が(昨年の)本屋大賞について対談しているんだけど、私としては全面的に納得でした。ご参考までに。本屋大賞メッタ斬り!(Excite Booksニュースな本棚)...

のだめ14巻

「のだめカンタービレ #14」が発売になったので、さっそく買ってきた。  帯の色違いがあったので、なんじゃろか、と思ったらば限定版で、しおりセット付きなのであった。通常版が410円で、限定版が680円だったかな。一瞬迷ったけど(迷うなおっさん)通常版を買ったわけですが。  なかにはチラシが入っており、6月発売の15巻+マングースぬいぐるみのセットを予約しやがれというのである。マングースのへそを押と「ぎゃぼ」と鳴くんだそうだ。いらねえよそんなもん……ほしくなんか……ないぞ……いらないぞ。  なんというか実に、商売熱心なことでございます。  すでに14巻、関連グッズというかCDまで発売され、知らない人はいない国民的マンガになったわけですが(そうなのか?)、まだ知らないっちゅう人がいたんでざっと解説。  ひとことで言えば、音楽マンガ。といっても決してシリアスではない。それどころかギャグであります。主人公のだめ(野田恵)はピアノ専攻の音大生。福岡から上京し、同じアパートに住む指揮科の千秋真一に一目惚れして……という恋愛コメディなのだけれど、それよりもなによりも「音楽マンガ」。  のだめというぶっとんだキャラクター(変態、と呼ばれている)(もっとも千秋だって相当変わり者だ)や妙な脇役陣もたのしいのだが、とりあえず音楽マンガなのだ、と主張しておきたい。学生時代に吹奏楽や室内楽・管弦楽をやった人なら(バンドでもいい)、なんかこそばゆくも懐かしい香りがしてくるだろうし、そういう経験がなくとも、クラシックが好きならば楽しめることは請け合いだ。  まずは最初の1、2巻を読んでみることをお勧めする。そこでハマれば「ぴぎゃっ」である。なんじゃそりゃ。...

救う必要があるのか?

 新聞の第1面の三八(下から3段分のスペースを8等分している出版広告。“さんやつ”と読みます)にはときどき面白そうな(けど絶対買わない)本の宣伝が載っています。8月4日の朝日新聞には、吉川弘文館、大学書林、すばる舎、東京創元社、ごま書房、三五館、家の光協会、保険同人社の広告がありました。面白かったのはこのへん。 ●大学書林 『古典ラテン語辞典』36750円もします。『ウルドゥー語辞典』こっちなんか63000円だ。やはりラテン語のほうが需要があるのか。まあラテン語もウルドゥー語も、その存在は知っていたけれど、しかし『エウェンキ語への招待』(4725円)はそういう言語があることすら知らなかったぞ。《ツングース語の代表的な言語》らしいです。  しかしそんなものよりも、だ。 ●すばる舎 『我が子をニートから救う本』(1680円)。これはどうだ。サブタイトルに「ニート或いはニートの予備軍の親たちへ」とあります。《目標を見失った我が子を立ち直らせるのは親しかいない!》《多くのニートやその親たちと向き合ってきた人気キャリアカウンセラーが、ニートの気持ちを理解し、無理をさせずに自立させる方法を具体的に教えます!》ですと。  なんだかなあ。いっちゃ悪いが、ニートにさせたのは親だってところもあるんじゃないですかね。なにしろ養ってあげてるわけだ。ハタチになったら(18でも22でもいいけど)おまえの面倒はみない、自分で食いぶちは稼いでこいって言えばいいのに。よくわからんよ。すごいね親って。救わなくてもいいんじゃないかと思ってしまうのだが。そもそも《ニートから救う》って日本語としてどうなのかとも。無職・無教育・無求職から救うって、変じゃない?  親子がらみではもう1個。 ●三五館 『【決定版】わが子のうつ病を治す方法』(1365円)というのも。《いくつになっても、わが子はわが子――》《わが子に年齢はありません。「最新決定版」親の心得帳!》。まあこれは病気の話だからねえ。もっとも、ウチの子に限って、と自分の子供が鬱病であることを認めようとしない親もいるらしいので、こういう本でも読もうとする親きょうだいはマシなほうなのかも。だけど“いくつになっても”とか“わが子に年齢はありません”とかいった煽り文句には、いやーなものを感じてしまうのであった。...

2分だけでいい

宮藤官九郎『池袋ウエストゲートパーク』(角川書店/角川文庫 781円)  テレビドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(2000.4.14〜6.23放映)とそのスペシャル版『池袋ウエストゲートパーク スープの回』(2003.3.28放映)のシナリオ集。連ドラ部分は2003年1月に角川書店より刊行。  てなわけで『タイガー&ドラゴン』の勢いで『IWGP』だ。「スープの回」も併録されていてお得です。  それにしても、いやあなつかしい。もう5年も前になるのか。はじめて宮藤官九郎のドラマをみたのがこれだった。原作は読んでいたけど、それに決して負けていない、テンポのいいドラマだったなあ。長瀬智也や加藤あいを、ちゃんとその人として認識したのもこのときがはじめてだった。  主要人物以外にも、巻末のキャスト一覧をみると意外な人が出ていたりして、ああ、もう一度みたいかも。妻夫木聡なんかも出てたんだねえ。クドカンドラマではお馴染みの面々もいるし、ああ、そうか加奈は小雪だったか。そしてこの「剣」って……、しかも、剣  「♪オレの! オレの! オレの話を聞け〜2分だけでもいい〜お前だけに本当の〜ことを話すから〜」 (中略) マコト「……ヘンな歌」(p.647) ってここからタイガー&ドラゴンがつながってたのかよ。  などなどといろいろ新しい発見もあり、楽しいシナリオでした。木更津キャッツアイも出てくるし。原作にあるエピソードをうまくちりばめ、かといってそれに頼りすぎてもいない。完成度、高いと思う。キング役の窪塚洋介をはじめとした脇役も芸達者だったというのもあるだろうけどね。  いやあ、楽しいたのしい。...

俺の話をきけ

宮藤官九郎『タイガー&ドラゴン』(角川書店/1700円)  テレビドラマ『タイガー&ドラゴン』のシナリオです。全11回のシナリオに加えて、元になった落語11篇も収録。テレビドラマのシナリオなんて誰が買うんだよ。俺か。  笑って泣かせる小虎(虎児……ドロップアウトしたヤクザ)と小竜(竜二……ドロップアウトした落語家のものがたり。ドラマでも充分楽しみましたが(欠かさず録画してしまった。が、一度だけ野球中継が延びて途中で切れていた。くっそう)、見られなかった分もふくめて文字でも読んでみた。  まだ記憶が新しいんで、よみがえるよみがえる。でもやっぱり映像でみたほうが楽しそうだな。DVD-BOXの魔の手が……。  後半の落語(ちくま文庫の『らくご百選』などから収載)も、知らない人には親切かも。子供のころ角川文庫の『古典落語』全10巻を読んでいた俺様(落語のLPも20枚ぐらいあったなあ)としては、なんか微妙。やっぱり最近の若い衆は落語なんかしらないのかねえ。昔だって、そりゃまあわざわざ“読む”なんてこたぁしなかっただろうけれど、テレビつけりゃしょっちゅうやってたもんだ。正月の寄席中継だってあったし(今もあるか)。もっとも、寄席があんなに狭いってのは行ってみないと実感できないかも。  いっぽう連ドラになる前の2時間スペシャル『三枚起請の回』が収録されていなかったのは残念。別売になってやがる。文庫になるときに一緒にするって魂胆か、角川め。  てなわけで口調がアレでございますが、ドラマを楽しめた人にはお勧め。奇しくも7月19日は宮藤官九郎35歳の誕生日。...

みてないドラマの脚本 II

宮藤官九郎のことの続き。「池袋ウエストゲートパーク」「木更津キャッツ」「タイガー&ドラゴン」

みてないドラマの脚本

宮藤官九郎のこと。「ぼくの魔法使い」

オタは高いところから低いところへ流れる

安野モヨコ『監督不行届』(祥伝社)  安野モヨコといえば『美人画報』の人である(それしか読んだことないけど)。そして庵野秀明といえば『新世紀エヴァンゲリオン』の人である(それしか見たことないけど)。最近では綺麗なアイリッシュセッターをつれて散歩していて駐車してある車に興味を惹かれてしまい、じっと車を見続けるというややあやしげな人であったりもする(参考:日産:TIIDA BLOG:庵野秀明さん、ティーダに釘付け)。  そんな有名な(しかもお金持ちの?)ふたりが結婚したら、どんな生活になるのか。1960年生まれの《オタクの教祖》と、1971年生まれの《マンガ界のクイーン》の夫婦生活を赤裸々に描いたエッセイコミック。2005年2月15日初版発行、同2月25日第2刷発行、本体価格800円。でもね、いちおう冒頭に書いてある。あのお約束が。※このマンガはフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません。 って。そんなわけあるかい!  しかしおかしい。結局、よりパワーの強いほうが、弱いものを引きずり込むわけだな。薄いほうへはけっして行かない。薄かったころにはけっして戻れない。不可逆性っていうんだっけ。巻末にはしっかり「用語解説」「庵野監督インタビュー」もついている。愛(と諦観)にあふれる一冊。  興味を持った人は、祥伝社サイトの特集ページで「第壱話」と「第弐話」が読めます。  すでに読んだかたは、監督サイトには正誤表があったりします。丁寧だなあ(笑)。...

セレブ列伝

中尊寺ゆつこ『セレブ列伝 The Lives Of 77 Celebrities』(廣済堂出版)  著者が1月31日に亡くなってしばらくたって書店でみかけたので買ってみたら、ずいぶん前に出た本だった。初出は「会社生活の友」というサイトの99年10月〜02年6月。連載時のタイトルは「この人を見よ」で、今でもこちらで見ることができる。 “この人”のなかからセレブっぽい女性を選んで編んだのがこの本ということになる。実際には、田中真紀子とか“ハマのメリーさん”とか微妙な人もいるけど。もっとも、ほとんど文章も書き直し、新たに24人分書き下ろしたそうだから、連載時のままではないようだが。 実際はほとんど書き下ろしに近いのです。 というのも、漫画も文章もほとんど書き換えて、 新たに24人!分を書き足したからです。(Chusonji Comixより) なにしろミレニアム時分のネタだからやや古い。アニータだの小渕優子だの東尾理子だの(今なら宮里か横峯か)微妙に古びた感じがしてしまうし、私なんぞは全然知らないジャンルの人もいるけど。でもまあそれが時代というものでしょう。  なんとなくバブルの申し子という印象のある中尊寺ゆつこ(漫画家デビューは87年、「オヤジギャル」で流行語大賞を受賞したのは90年)ですが、そのあとも精力的に活動しつづけ、結婚もして、ふたりの子供も産んでたんですね。下の子なんてまだ2歳にもなってない。人の運命なんていろいろだから、軽々に気の毒だとかかわいそうだとかいいたくありませんが、人間なんてあっけないもんだなあ、つくづくと感じた次第です。公式サイトの日記での翔んでるママっぷり(普通にいいママっぷりなんだけど)をみると余計にね。合掌。 ▽中尊寺ゆつこ公式サイト Chusonji Comix  http://www.chusonji.com/jp/index.html...

正しい保健体育

みうらじゅん『正しい保健体育』(理論社/よりみちパン!セ 1200円)  2004.12.20初版。2004年の暮れからはじまった、理論社の“中学生以上すべての人の”という但し書きがついている叢書《よりみちパン!セ》の第1回配本分のうちの1冊。同時刊行はほかに重松清、白川静、森達也、伏見憲明。ヤングアダルト新書とも表示されているので、要するに中高生向けの人生読本(それもかなりカジュアルな――岩波ジュニア新書とは一線を画すような)みたいなもんなんだろう。  いずれにせよ、みうらじゅんじゃなければ手に取らなかっただろうけれど、取ってしまった。読んでしまった。大笑いしてしまった。  こんなんガキに読ませていいのかよ。真面目な少年少女は読んじゃダメだ。真面目な大人も読んじゃダメだ(Amazonのカスタマーレビューには《内容は安心して子供に見せられるものではありません。/下ネタばかりです。》なんてこと書いちゃってるかわいそうな“大人”さんがいらっしゃいますが……)。しかし傑作だ。  じつに正しい性教育および大人教育の教科書なんだけれど、これは教育委員会には絶対採用されないわな。採用されたとしても正しく教えられる教師もいないだろうし。  でも書かれていることはしごく真っ当。不足があるとすれば同性愛などの一般的ではない(という言い方がまずければ、マイナーな)性的嗜好について書かれていないことぐらいか。ま、そんなに盛り込んでもしょうがないけど。だいたい男子向きというのも、女子にとっては不満があるかもしれない。でもまあ煩悩でいっぱいになってる思春期男子に特化したことで、この本は価値を高めているとも言える。だから女子は、ああ、男子は馬鹿だ馬鹿だと思っていたけどやっぱり馬鹿だったんだな、と確認するつもりで読むのがよろしい。...

のだめ11巻

出てました。買いました。こんな感じです。 今回のカバー絵はファゴットですかな。 ヤマハのサイトにオーケストラの楽器というのがあり、各種楽器の説明を読むことができます。...

最近の読書メモから

『ストリート・ボーイズ』ロレンゾ・カルカテラ(新潮文庫) 第二次世界大戦末期のナポリにのこった300人の少年少女たちが、ナチスドイツの機甲師団に立ち向かう。子供たちが、武器ではなく、サッカーボールで“たたかう”ことのできる日がいつか来ますように。 『Say Hello! あのこによろしく』イワサキユキオ(ほぼ日ブックス) 「ほぼ日」の人気コーナーの書籍化。反則的なかわいさ。秘密つき。 『背広の下の衝動』新堂冬樹(河出書房新社) 残念ながら失敗作としか思えない作品集。あひゃひゃ。 『アキハバラ@DEEP』石田衣良(文藝春秋) 電脳ベンチャー対電脳巨大企業。ネットに革命をおこした風雲児たちの長篇青春群像SF小説。なんじゃそりゃ。でもおもしろい。 『蝶のゆくえ』橋本治(集英社) この本は、冒頭の「ふらんだーすの犬」に尽きる。なんとも哀れでかなしい話だが、おそろしいのは、これが日常茶飯事だという現実。...

不思議な写真

本多孝好『真夜中の五分前 side-A』『真夜中の五分前 side-B』を読了。ひとつの物語なので、A面B面とかいわずに上巻下巻でいいのに。というか混乱がないのにと思ったり(←「side-A」しか目に入らなくて、A面を読み終えた翌日、あわてて「side-B」を買いに行ったもんでな)。 一気に読ませる、とても良質の恋愛小説でした。いま世界の中心に会いにいきますとかそこらへんで満足してちゃいかんでしょう。こういう本がもっと売れないといかんと思います。とはいえあまり話題になってもちょっと悔しいわけですが。 しかし今日はその感想がテーマなわけではなくて(おいおい)、装幀につかわれている写真の話。...

らも氏死去

作家の中島らもさんが死去(asahi.com : 社会) というわけで中島らも氏が亡くなりました(公式サイト)。らもさんらしい死にかたというかなんというか……。 まっとうな人生から踏みはずすのはいいが、階段踏みはずしてどうする。 合掌。...

ありゃー

青山ブックセンターが営業中止 おしゃれな店づくり定評(asahi.com : 社会) びっくりしたというか寂しいというか……。 町の小さな本屋さんも経営が苦しくなって閉店が相次いでるようですが、ABCみたいなそこそこ大きなところも苦しかったんでしょうか。残念なことです。...

のだめ

駄犬道さまやならのさまのところで情報を入手したもので、さっそく9巻を買ってきましたヨ("のだめ"全部)。すぐ読みましたヨ。 ならのさんのとこで紹介されていたのだめカンタービレキャラチェックもやってみましたヨ。真澄ちゃんでした……ヨ。まわりはなぜか千秋様が多いんだが、よーするにそーゆーきょーぐーってことなんでしょうか。...

バーの入門書

『スタア・バーへ、ようこそ』岸久(文藝春秋/1500円)★★★☆ 銀座1丁目で「スタア・バー」を経営するバーテンダー(65年生まれ)が語り下ろしたバーの作法。 作法といっても堅苦しいものではない。ロングドリンクについてくるマドラーは飲むときどうすればいいのか(そのまま飲むと頬につっかえる)、マティーニのオリーブは食べていいのか悪いのか。カクテルに不案内な人はどんなふうに注文をしたらいいのか。等々といった、知らなくてもかまわないけど、知っているとバーをより楽しめる知識・蘊蓄、バーの裏話などを読みやすくまとめてある。 語り口調の文体がややまどろっこしい感もあるが、お店をやっている人だからしかたないでしょう。 著者は89年にスコッチウイスキー・カクテルコンテスト全国大会で優勝(最年少)し、96年にはIBA世界カクテルコンクール・ロングドリンク部門のチャンピオンにもなり(日本人初)、アイラ島特別民間親善大使などもつとめており、なかなかの経歴の持ち主。カバー袖の写真は丸顔のにこやかなあんちゃんなんですが(身長177センチ、体重100キロ)。 今度行ってみようかなと思わせる(ということはこの手の本では成功しているといえましょう)、当たりの柔らかい本でした。...

鷺沢萠氏逝去

作家鷺沢萠(さぎさわめぐむ)氏が亡くなった、とのこと。読売新聞@Yahoo うーん……なんなんですかね、この“ショック”は。 別にとりたてて大好きな作家というわけでもなんでもなかったんだけど。 なんにせよ35歳で死ぬのは反則。...

海底の王子様

サンテグジュペリ搭乗機の残がい発見、墜落地点を特定 あらまあ。サンテグジュペリが、 第2次大戦中に搭乗していて行方不明になった飛行機の残がいを、仏南部マルセイユ沖の地中海の海底で発見し、墜落地点を特定したことを明らかにした。 そうです。海の底だったのか。...

エハイク

吉田戦車『エハイク』(フリースタイル) 初出「ほぼ日刊イトイ新聞」2002.3.12〜2003.3.11。 あはは。吉田戦車だから許される。なんとなくわかるけどそこはかとなくおかしい俳句、徹頭徹尾なんだかわけわかんねえ俳句。「弟を迎えてさばく下宿烏賊」「タマちゃんに届け我が家の残り湯よ」そんなぐあい。たまに入ってる、吉田戦車の私生活を思わせる(主に子供ネタ)がほほえましい。...

中村うさぎは小説に向いてない?

中村うさぎ『月9』(朝日新聞社)読了。“業界騒然の超モデル小説!”とオビでは煽っていますが、どうにもこうにもひどい。考えてみれば中村うさぎの「小説」を読むのは初めてなんですが、この人もともとはジュニア小説でデビューしてるんだよねえ。こんなんでよくやっていけたものだ。こんなんだからやってられた……とは思いたくない。 月9とは月曜夜9時からのテレビドラマの別名で、こないだまではキムタク主演で「プライド」っつう制作者のプライドはどこにといいたくなるようなやつをやっていた、その枠です。フジテレビ以外の月曜9時枠も月9と呼ぶのかどうかはしらない。 で、そういう枠の脚本を書けるようになると脚本家としては一人前なんでしょう、たぶん。だいぶ売れっ子ってことだよね? この小説に出てくるのは、中堅どころの脚本家で、ひとりは落ち目、ひとりは上り調子。ねたんだり足をひっぱったり悪い噂を流したり男を奪いあったり呪ったりと、まあどこにでもあるようなことがあるわけですが、そこに南米土産の呪いの人形をからめてサイコサスペンスっぽくしてみましたー、という感じです。 ……屁のつっぱりにもならねえ。 業界を騒然とさせるならもうちょっとリアルに書いてくれ。大物脚本家長本詩織ってのは橋田壽賀子なのか? ちがうのか。もうちょっと若めか。自サイトで自作自演自画自賛したというテンパっちゃった脚本家は出てこないのか(笑)。 「あんたは私の犬よ!」ってせりふは、岩井志麻子が島村洋子に言われたってどこかで読んだ気がするが、それがヒントになったのかな。 文章だって、エッセイならいいが小説でこれじゃあなあ。もうちょっとなんとかならないものか。頭から、ざばりと冷水を浴びせられたような気がした。(p211)ださ……。いやこれくらいは別に問題でもなんでもないんですが、ちょっと目についたので。もっとすごいのがあったような気がするんだけど、別の本かもしれない。調べる気力もないからまあいいや。 エッセイは嫌いじゃないんだけどね。まあテレビにもがんがん進出してるみたいだし(NHKの新番組「今夜は恋人気分〜とっておき夫婦物語〜」の司会をやるようです。それにしてもすげえタイトルだな)、あんまり小説には力入れなくてもよさそうな感じが。...

だいぶ形になってきた

かな? たぶんこれでそんなにゴチャゴチャにはならないであろう、と。 参考文献は『Movable Typeで今すぐできるウェブログ入門』(平田大治著 インプレス)など。参考サイトは、もういっぱいありすぎて数えられません。 ついでに複数カテゴリ設定の練習。...

爆笑純愛小説

新堂冬樹「ある愛の詩」(角川書店)読了。爆笑。そんなに笑わせてどうするかなあ。「忘れ雪」もそうだったけど。著者はこれをマジで書いているんだろうか。ぜってえ違うと思うんだけど。マジだったら怖い。鬼畜の新堂冬樹がマジで純恋小説書いてたら、そっちのほうが怖い。 アマゾンを見ると、感動してる客がけっこういて驚く。ラブストーリーのパロディにしか見えないんだけどなあ。汚れたオトナなのかしらボク。...

本人の人々

南伸坊『本人の人々』(マガジンハウス)。いやこれは傑作。ケッサクといっても過言ではない。すごいね。これだけ集まってると、ひとつふたつ(もっとか)似てなくても気にならない。むしろ似てないのがあったほうがほっとする。 ふつうに面白いのは養老せんせいとかそのあたりの「いかにも」な人たち。でもベッカムとかキアヌ・リーブスとかGacktとか、おいおいそりゃむちゃだろうっていうののほうがインパクトが強い。ベッカム、似てるもんなあ。 たいしたもんです。...

オトナ語の謎。

糸井重里編『オトナ語の謎。』(東京糸井重里事務所/ほぼ日ブックス)を読んだ。だいぶ広告営業系に偏ってはいるけれど、なんとなくわかるのもあり、そこそこ面白かったっす。わたくしまだまだオトナ語を駆使しきれておりません。いっそう精進いたしますのでご指導ご鞭撻のほどホウ・レン・ソウで何とぞ何とぞ。...