April 10, 2006

やっぱりね

本屋大賞2006」が決定。大賞はリリー・フランキー『東京タワー』ですと。
 ふーん。
 やっぱりな、というか、しょせんその程度の賞か、というか。2位が『サウスバウンド』だったんだなあ。残念。

「本の雑誌」の増刊で「本屋大賞2006」というのが出ていたわけだが、なんとも卑怯な編集後記がついている。なにこれ。
 まずは、誰が書いてるのかね? イニシャルのひとつもついてないんですが?
 そして内容はというと、開き直りの言い訳で終始している。

第三回の結果に異議を唱える人もいるだろう。(略)百万部を超えた本よりも、五万、十万部前後の本を大賞に選出し、より多くの読者に知らしめるほうが創設の趣旨にあっている、とはいえるのかもしれない。

 いえるのかもしれない程度ですか。いやてっきり、“あんまり知られてないけど、こんな名作・佳作があるんだよ、こういうのを売りたいんだよ売れてほしいんだよ”という趣旨だと思っていました。それ以外になにかあるとはちっとも。

 で、そのあとは、投票するかどうか悩んだという投票者(でも結局票を投じているわけですが)のコメントを引用しつつ、うやむやにしている。

百万部ではまだまだ足りない、もっと売りたい!という意志が集約されたのが今回の結果だといえるのではないか。ミリオンセラーがさらに桁ひとつ伸ばす勢いになることを期待したい。

 ミリオンのさらにうえの桁って……、いやだよそんな、国民の1割もが同じ本を読むような国なんて! きもちわるい。たとえそれがどんなに感動的な本であっても、すばらしい本であっても。

 冒頭の「はじめに」では投票者数が増加したということを誇らしげに語っている(1次投票者数368人、2次投票者数290人。2次投票には、候補作全11作を読まないと参加できない。ちなみに一番最初の“エントリー書店員”は548人)が、結局のところ、ほっといたって誰もが読むような本が候補となり、ハードルが低くなって結果的に投票者数が増えたということではないのか。
 編集部(この「はじめに」は“本の雑誌編集部”名義で書かれている)では、

この高いハードルをクリアして参加してくれた書店員に深く感謝したい。

 という認識のようですが。あはは。

 本屋大賞実行委員会は東京都の認可を受けたNPO法人になったそうですが(なんのために?)、ならば、対象図書を、《毎年12/1から翌年11/30までに刊行された日本の小説のうち、翌年12/31時点で発行部数が10万部を超えていないもの》、とでもしてはどうかと思うんですがねえ。
 11月30日までに出てる本で第1次投票をおこない、上位から10位を第2次投票の対象にするわけだけども、年末の時点で10万部超えてたらそれは排除しちゃうの。5万部でもいい。
 出版社も困っちゃうか。オレは本屋大賞ほしかったのに重版しやがって、なんて怒る作家も出てきたりして(それはないか)。

 だってさ、「いちばん!売りたい本」なんて堂々と宣言しつつ、選んだのが100万部突破の大ベストセラーだなんて、普通に考えて馬鹿みたいじゃないか? ああ、ようするに書店員のみなさんは、内容より売れ行き重視なんだね家のローンも自動車のローンもあるもんね、って私なんかは思ってしまうわけですが。
 いや、いじわるな言い方なのは承知している。他の賞だって、出版社の思惑とか作家の力関係とかが思いっきり影響しているんだから、本屋さんの本屋さんによる本屋さんのための賞というのがあったっていい。
 でもね、だったらもうちょっと素直になってくださいよ。

 もっと売れてほしいもっと売りたい、というお題目の裏には、当然「今はあまり売れていないけれど」というのが隠されているはずでしょ? それをなかったことにして、百万部だっていいものはいい(そりゃいいですけどね)、一家に一冊ひとりに一冊(それはいやです)とお祭りをするならば、素直に「売れてるものをもっと煽って書店業界の不景気を吹き飛ばしたい」といえばいいのに……。

 さてお次は、図書館司書が選ぶ「いちばん!貸したい本」だな。図書館大賞

 今年の本屋大賞は、文学賞メッタ斬り!で取り上げてくれないのかなあ。楽しみにしてるんだけどなあ。
 とおもったら、日経BPに場所を移したらしいです。さてこれから読もう。本屋大賞をメッタ斬り!
 で、ざーっと読んできた。おふたりの緊急コメント。全面的に同意だあ。予想のときの『東京タワー』『さくら』についての豊崎さんの意見にもすごく同意だあ。
 なんとなくすっきりしたので、寝る(笑)。

投稿者 percent : April 10, 2006 02:08 AM | トラックバック (1)
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コメント

この機を逃したら一生読まないと思い(笑)、読みましたよ『東京タワー』。ヂヨウネツ大陸という番組に著者が出ていたのも見たしね。
なんか……たくさん食べるとアタるとわかりきっている牡蠣などをついたくさん食べちゃって、意外にもだいじょうぶだったんだけど、体調にひびかないところがかえって不安、もしかして毒がまわるのに時間がかかってるだけなんじゃないのかなどと考えてもやもやしている、ときの感じに似ている。すいませんわかりにくくて。読了してからまだ10時間くらいなので。毒が頭にまわったらまた投降します。

Posted by: P柿 : April 18, 2006 02:24 PM

投降って降参するんですかP柿さん(笑)。

私も見ましたよ「情熱大陸」。けっこうまじめなのね、あの人。
ちょっと逆上気味に上ではいろいろ書いていますが、「東京タワー」はエッセイとしてはいいと思うんですよ。日本伝統の私小説なのかもしれないけど、でもやっぱりエッセイ部分がすぐれているのだと思います。ところが変に〈小説であること〉を意識してしまい、著者はそこがイイつもりだったのかもしれないけれど、読み手(っつうか俺だけ?)にしてみればそこがダサいと感じてしまった、というわけです。
彼のバカエッセイのファンだからか、あの人にはバカなエッセイにプラスするならせいぜいマジメなエッセイどまりにしておいてくれればなあと思った次第です。マジメ小説はいらないなあと。

Posted by: ぱと : April 18, 2006 02:50 PM
まあ気楽にコメントしてくれたまえ。もうしわけないが、スパムが多すぎなのでコメントは管理者の承認後、掲載される。まあ気長に待ってくれたまえ。









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