October 19, 2005

どこもかしこも

 いや今日は「声」欄じゃないんですってば(笑)。
 読売新聞に「気流」欄という、まあ朝日の「声」と同じような読者投稿のページがあるんですが、そこに載っていたのだそうです。ありがとうございます。ってなんで俺にこんなもん送ってきますか××さん。10月18日付けです、はい。

未熟な母親には
声かけ励まして

 なんだかもうどこの新聞も同じじゃないっすか。ええと高崎市の主婦(32)の投稿です。

「子供の迷惑行為 注意できぬ母親」という投書(6日)を読みました。投書された方は、電車で騒ぐ子供を一向に注意しようとしない母親に我慢できず、子供をにらみつけたそうです。

 ははあ。いやいいですよ6日の投稿まで探さなくていいですからね××さん。絶対いらねえ(笑)。っていうかもうわかりました。子供の迷惑はちゃんとやめさせんか、という糾弾の投書だったわけですね。
 んで、今日の投稿者は3人の子持ちで(6歳、4歳、7か月)、こんなふうにしてほしいというわけです。

 まず、母親に話しかけてほしいのです。私にも経験がありますが、「子育て、大変でしょう。えらいわね」と一言、言ってもらえるだけで、涙が出るほどうれしいのが子育て中の若い母親です。

 ええええええっ!? そんなバカな!?

(なんかだらだら書いていたらすげえ長くなっちまったので――しかも別に目新しいことは書いていないので――お暇なかただけ続きをどうぞ)

 な、なぜ? いやあよくわかりませんけどね、若くもないし母親でもないんでね。でも、「えらいわね」なんて言われたら、逆に腹が立ちそうなもんですが、そんなことないんでしょうか先生。しかもそんなことで涙が出ちゃうんですか。それって、マリッジブルーとかマタニティブルーとかみたいなものですかね。
 それにしても《若い母親》に限定しちゃうのはいかがなものか。歳くった母親は励まさなくていいってことか。

 そして、子供にも「電車好きなの? 楽しいでしょう。でも、ここはあなたのおうちじゃなくて、いろいろな人が乗っているのだから、静かにしていましょう」などと直接、教えてもらえたらと思います。

 すげえ。すっげえ。すごすぎる。
 いやお母さん、それあなたの仕事でしょう。それをしないから6日の投書の主は腹を立てたんでしょう。違いますか。
 電車の中でガキ、いや、お子さんが騒いでたら迷惑なんですよ一般的に。日本であれ外国であれ(外国は子連れに優しいのに、という声が聞こえてきそうなので先に書いておく)。でも、まあ羽目はずしますわな。子供だから。調子に乗りますわな。そしたら普通に考えて、親がそれを叱るとかたしなめるとかするわけですよ。そしたら周囲も「まあしゃあねえな」と思うわけです。
 それを放置しておくから睨まれるわけよ。「なってねえなあ」とか言いたくなるわけよ。「親の顔が見てえぜ」とかね。
 ――私が親ですが何か?
 いやそうじゃなくて、そのあなたを育てた親ね。そこでギャーギャー騒いでるお子さんの祖父母ね。
 だいたいなんで、電車の中は家ではない、ほかの人に迷惑だから騒いではいけない、などというごく基本的なことを、赤の他人が教えてやらにゃいかんのだ。心底わからん。

 もちろん、注意しない親が悪いのは当たり前ですが、母親もまだ若く、未熟であり、皆で母親も子供も育てていくという温かい気持ちが、これからの社会には必要だと思います。

 …………。
 いつものパターンですね。朝日も読売も変わらねえなあ。裏でつながってるんじゃねえか。
 ほんと、この手の投書ってこのパターンが多い。

  • もちろん親が悪いんです。(一応、批判されている側の非を認めるふり)
  • でも社会も温かく見守ってくんなきゃイヤ!(舌の根も乾かぬうちに、責任転嫁)

 ってわけだ。こいつらの頭の中は同じものしか詰まってないのか。どこで覚えてきたんだかなあ。

 最後にこのお母さんは、

子育ての先輩である年配の方のアドバイスは貴重です。ぜひ、若い母親に話しかけてください。私は子育てを卒業したら、若いお母さんたちに「頑張ってるね!」と話しかけようと思っています。

 と締めてます。
 いやあどうだか。
 この人の頭の中にあるのは、《子育ての先輩である年配》女性つまりおばちゃんしかないんだろうと思う。女性とは書いていないがきっとそうだ。しかも微妙に若い母親だといやなんだろうなとも推測できる。
 人のよさそうな、優しいおばさまが、猫なで声で「たいへんねえ」と《私》を褒めてくれて、「いい子ねえ」と子供に話しかけてくれる、ってことを期待しているのだ。例の朝日の投稿じゃないが、全否定しないで、ってことですな。

 だが、電車に乗っているのはそんな人たちばかりではない。きびしいお姉さんも、こわいお兄さんもいるわけだ。とっちらかったじいさんも、くさいおっさんもいるわけだ。その人たちには、迷惑を注意する権利もないのか。
 おそらくこの投稿者にとっては、そういった人々(彼女が受け入れられる優しい先輩ママ以外のすべて)は論外なんですね。見るなさわるな話しかけるな、なんですよ。ええ、たいていの場合。

 未熟であることを免罪符にしちゃいかんと思う。それって「子供がしたことだから」と親が許しを請うのと同じメンタリティだもの。前にも書いたが、「子供がしたことだから」っていうのは、
「うちの子がとんでもないことをしでかしまして誠に申し訳ありません」
「いやあいいんですよ、子供のしたことだし。今度から気をつけてくださいね」
 と被害に遭った側が、内心思いっきり腹が立っているにもかかわらず、平身低頭する親に免じて苦虫を噛みつぶしながら言う台詞なわけです。加害者側が言っちゃいかんのよ。
 わたしは未熟な親だから(許してね)、じゃあダメだと思うよ。だったらなんで子供作ったんだ。子供を育てる前に自分を育てろよってなもんです。とりあえず懸命にやってる姿勢があってはじめて、
「まあまだ新米のお母さん(お父さん)だからわからないこともあるよね。こういうときは、こうするといいんだよ」
 と周囲はアドバイスできるんじゃなかろうか。子供は社会(とか地域とか)が育てる、などというのはじつに耳にここちよい言葉ですが、まず大前提として親が育てるもんでしょうよ。だって自分の子供なんだからさ。
 核家族化だし少子化だし未熟だしと言い訳ばっかりして、社会に頼るばかりじゃいかんのではないか(社会的なサポートの必要性とは別の話です。念のため)。まず親になったことの責任をじゅうぶん自覚してちょ。

 しかしまあ、このお母さん、子育てを卒業したら(っていつよ?)若い母親に話しかける(親全般じゃなくて母親限定なのも不思議)んだそうですが、とんちんかんな励ましやら助言やらを連発してウザがられると思うんだがどうだろうか。

October 16, 2005

Re:すごいっす

 というわけでたいしたことないけど先日の「すごいっす」で紹介した投稿への反響(05/10/12朝日新聞「声」欄)。

子は授かり物
モデルは不要

 投稿者は44歳の主婦。いたってまともな反応です。

5日の投稿のように子ども3人が普通となれば、既に2人を育てている母親にも「3人目は」と追い打ちがかかるのではないでしょうか。
 そもそも子どもは国の少子化を防ぐために産むものではありません。多産をしたからといって、手柄のように誇るものでもないはずです。

 と、まあだいたい頷ける内容でございました。
 もっと一刀両断に、「ば〜か」というような反応を見たかったんだけどね(笑)。

October 10, 2005

見守っちゃいかんと思う

 大分市の56歳、Tさんの投稿です(10月10日付「朝日新聞」声欄)。

ニートの息子
温かく見守る

 肩書きを見てみます。Tさんは無職であります。ええっ!?

「おはよう」と問いかけると、次男は「アー、今日は頭が痛い」。もう午後2時過ぎだ。彼が高校を中退したのは3年の3学期。

 息子はいま流行りのニートです。パパも無職、息子も無職、いやはや。幸いニートなのは次男だそうですから、きっと長男が家族を養っているのでしょう。何人家族なのかわかりませんが、長男、かわいそうです。この次男は何歳なんでしょうねえ。

 確かに私は、彼に一度も勉強しろと言ったことがない。カウンセリングでは「育て方に原因があるわけではない」との言葉。「今の子は30歳までが思春期」と、その時知った。

 よかったですね、教育方針を否定されなくて。30歳までが思春期だなんて馬鹿げたことを言ったのはそのカウンセラーさんですか。まあじぶんに都合のいいことを信じるしかないですもんね。

思うに、全国に70万人近くいるニートは時代の落とし子だ。大学に行き、どんな仕事に就いても、幸福になるとは限らない。

 おいおいおいおい。時代の落とし子じゃなくて、あんたの息子だと思うんだがどうか。数が多ければ安心なんですか。ああウチだけじゃないからしょうがないよなとか思うのですか。大学に行こうが就職しようがそりゃあどんな選択をしたって《幸福になるとは限らない》のは当然のことです。なに寝ぼけたことを言っているのかこのおっさんは。

僕と妻は腹をくくった。この子が自信をつけ、自分の道を見いだすまで、何年たっても温かく見守ってやろうと。

 はいはい、ご立派スリッパ。温かく見守るのは勝手ですよ。でもなあ父ちゃん、とりあえず無職はまずいだろ、無職は。すげえ大金持ちで金が有り余っていて、息子のひとりやふたりニートになっても死ぬまで安泰、っていうのなら見守るのもよろしいかと思いますが、収入がないのに見守ってる場合じゃないと思うんですがいかがでしょう。
 いや、もしかしたら奥さんが大富豪なのかもしれないですし、ご長男に会社をまかせて悠々自適の元社長なのかもしれません。だったらまあいいです。「無職」という肩書きにも、その背景はいろいろありますからね。でもやっぱり《「歌と笑いと涙 心に晴れ間が」72歳無職》というときの「無職」とは意味合いが違ってくるのでそこらへんは明記していただきたいもんです。

 個人的には、ニートなどというものはほっときゃいいと思ってます。ほっとくというのは、国が援助する必要もないってことで、一般失業者とおなじように、職業訓練を受けたい人は受けられるようにしておくだけでよいと。ニート対策のためにわざわざ税金を使う必要はないという考えです。ニートが食うに困って強盗でもするようになったら、そのときは別の意味での対策は必要かもしれませんがね。
 なにしろ、とりあえず死なないもんなあ、みんな。ストリートキッドになって引ったくりで生計をたてるとかしなくても平気だし。
 親ってえらいねえ。とことん庇護するよねえ。またニートちゃんたちもそれに甘んじるよねえ。一日も早く親のもとから脱出したいとか思わないんだろうなあ。親子のつながりの深いこと深いこと。親嫌いの俺としてはちょっと気持ち悪いっすけど。
 まあ親の利用方法としてはいいのかもしれないですね。かじれるだけスネをかじり(かじれるスネがなければそこでアウト)、親の死後は遺産を喰いつぶす(遺産がなければそこでアウト)。親のほうは我が子が近くにいてくれれば無条件で安心するみたいだし(子供に殺されたりしたらそこでアウト)。
 崖っぷちのところを手に手を取って生きていくのなら、それはそれでスリリングかもしれません。緩慢な一家心中にしか見えませんが、本人たちがそうしたいのならいいのでしょう。自分で選んでるんだからね。せいぜいがんばってください。

October 09, 2005

やっと来た

 やっと来ましたよ、「全否定」への反論。

一緒に謝って
子どもの範に

 でも……期待はずれだー。

 10月9日付声欄のこの投稿者は、54歳の保育士。
 いちおう言ってることはまともなんだけど、なんかぬるい。

久しぶりのお出かけが台無しになってしまった悲しい気持ちが伝わってきました。

 お気に入り(かどうかしらんが)のズボンを台無しにされたおばさんの悲しい気持ちはどうですか?
 まあそれでも、

 悪いことをしたら謝る。これは社会常識の一つです。

 と、全否定ちゃんに「おめえは非常識なんだよ」と指摘しているのでよしとしましょうか。本人はそうは受け取らないんだろうけどな。

 あちこちでこの手の投稿(非常識な親に迷惑をかけられた/子供を連れていて避難された系)をみるたびに思うのは、責任の所在をちゃんと把握している人が少ないんだなということだ。
 子供がへまをしでかしたら(そのこと自体はしょうがない。不完全な人たちなのだからね)、その結果生じたこと(ものを壊す、他人に迷惑をかける、けがをする/させる等々)に対しては親が責任を取らなくてはならないんだってことを、認識しないといかんでしょう。子供のしたことなのに、とぶつぶつ言って謝ることさえしないってのはおかしいのだよ。

  • 自分が人にされてイヤなことは、人にしない。
  • もし間違ってそういうことをしちゃったら、その人にごめんなさいと言う。

 そんな簡単なことぐらい教えられなくてどうするのか。

October 07, 2005

すごいっす

 ちょっと注目するとすぐこれだからなあ。朝日の声欄のことですが。
 10月5日の『家族の標準は子3人いかが』という、なんかいっちゃってる主婦35歳の投稿。引用するのも面倒なのでやめておくが。
 この人は3人の子持ちなんですけど、少子化を止めるために統計のモデルを3人ってことにしてはどうかと提案なさっておられる。さらに、

子ども3人が普通になるように、子育て支援対策に「子どもは3人が楽しい作戦」を入れましょう。

 って、なんじゃそりゃ。
 なんなのだろう、この人は。どこかおかしいんじゃないか。
 本人はいたってまじめなんでしょうけど、そこがまた恐ろしいところ。要するに「私は三人も子供を産んで偉いでしょ。褒めて褒めて」ってことなんだろうけどね。え、穿ちすぎ? んなこたあない。なにしろ、

子どもは1人でも2人でもいいと思いますが、それでは少子化が進んでいくだけです。(中略)少子化を止めるには家族に子どもが3人は必要です。

 なんていう人ですよ。こういう人はね、子供のいない夫婦を見たら「お子さんはまだなの?」と尋ね、子供をひとり連れてる夫婦を見れば「次のお子さんは?」「一人っ子じゃかわいそう」などとのたまうタイプですね。二人兄弟の親には「もうひとりぐらい、おんなじよぉ」とかいって。
 まあここまで馬鹿をさらすのは潔いともいえるけどね。
 テレビコマーシャルで子供がひとりだと気に入らない、統計のモデルが子供二人世帯なのも気に入らない(ええと、よくわからんのですが、統計のモデルにするなら平均的な世帯をとらなきゃ意味ないんじゃないの? モデル設定を変えるだけで少子化から多子化になるのなら、大家族をモデルにすりゃいいんじゃない?)、とにかく異次元を旅してる相模原市の35歳。
 夢を見るのは勝手だけど、こういういろいろ不自由な人を紙面で晒し上げるのはどうかと思う。嘘です、もっとこういうのを読ませてくれ。真に受ける人間がいたりすると困るけど。

 今朝(7日)の同欄には、反論っつーか窘めみたいな投稿が掲載されており、ほっと一息。とおもってよく読んでみたら、なんか違う。なんかピントずれてる。産みたいけど産めないのよ社会をかえてよなんとかしてよ、といういつもどおりの投稿じゃないか。34歳主婦。

地域社会のつながりが薄れ、親たちは孤独のなかで育児を強いられている。外に出れば、一部の人から迷惑がられる。

 というぐあい。「標準を子供3人にしたところで、少子化に歯止めがかかるとはとうてい思えない」ってところはよかったんだけどねえ。
 少子化オッケーな俺がいうのもナンだが、要するに金を払う人間がほしいだけですから、政府は。それに社会が悪い(子育てにやさしくない、障害者・高齢者にやさしくない)から、って本当にそうかって思うよ。そろそろそういう建前はやめて、自分にやさしくないから、と正直にいったらどうでしょう。

 それにしても、中華街の馬鹿親に対する反論はまだかー。

October 02, 2005

全否定してやる

 すげえよ声欄。朝日新聞すげえよ。絶対これわざとだ。馬鹿を晒し上げするために採用したんだ。そうに決まっている。10月1日朝刊の、

幼児への注意
言い方考えて

 という投書だ。書いたのは埼玉県蓮田市の主婦35歳。

 さてここから先は、「ああ、あの投書読みました、まったくその通りだと思いますっ」という人は見ない方がよろしいかと思います。

 くだんの投書は、子供を連れて横浜に行って、しつけのなってない息子がバタバタしたら怒られていやんなっちゃうわ、というのが要旨(笑)。しかし突っ込みどころが満載なので、いちいち原文を引きたい。

 9月中旬の晴れた日、私たち家族は横浜へ買い物に出かけた。独身のころはよく遊びにいったが、5年前に子供が生まれてからは足が遠のき、久しぶりのことで、私は朝からうきうきしていた。

 蓮田市から横浜、約1時間半の道のりである。電車で行ったのかどうかは知らんけど。ご苦労さんなことである。“5歳の息子”しか登場しないので、ほかに子供はおらんのであろう。家族ってことは旦那と息子と三人で出かけたのか。いやいやシングルマザーという可能性もあるな。どうでもいいか。ま、なんにせよ幼稚園児が「ヨコハマ行きてえ」というわけもありませんけど、ママとしては行かずにはおれなかった模様です。

 中華街の道端のいすで一休みしていた時のことだった。腰掛けていた息子(5歳)が足をばたばたさせてほこりがたった。隣に座っていた40、50代とおみられる2人の女性たちが怒った。私も息子に注意したが、息子は少し疲れていたのだろう、機嫌も悪くなかなか注意をきかない。

 うわあ……。
 ええと、底意地の悪いワタクシとしては、“おめえ、それ自分の都合のいいようにしか書いてねえだろ”と思っちゃうんですがどうでしょうか。で、自分の都合のいいように書いていて、この馬鹿さ加減。たいしたもんです。
 普通ね、おなじベンチ(中華街の道ばたの椅子ってのがどんなんだったか忘れましたが)に座ってるガキがばたばたと埃を巻き上げていようと、そうそう注意はしないと思うんですよ。
 しますか?
 ま、俺の場合、赤の他人の子供が走り回ろうとなにしようと、そもそもその親が注意したりしてなければ、ああこの親はどうせダメだ、期待しても無駄だなと思って、できるだけ早くその場を立ち去ることしか考えないわけです。関わっても不愉快な思いしかしないでしょうからね。
 つうことはね、“隣に座っていた40、50代”の人はかなり頭に来たんだと思いますね。ほら、だいたいそういう“先輩お母さん”たちってのは新米お母さんに同情的だったりしますからね。それに、しつけのなってないガキが騒ごうと走り回ろうと、とりあえずその親が「どーもすいません」という態度をしめしつつ「××! やめなさい!」と被害を食い止めようとしていれば、そんな目くじらたてませんって。だから、おばさんたちはかなり頭に来てたけど、でも先輩としてこの子供にいちおう筋を通して注意してやろうと思ったんだろうなあと思うわけです。
 ってことは、この投稿者は言われるまでなんもしなかったんだろうなあ。そうとしか思えない、どうしても。
“私も息子に注意したが”って、その「も」はなに、「も」は。おばさんたちが言ったから、自分「も」注意したわけ? 人さまに言われる前に注意するのが当然でしょう。いや、注意じゃなくてまずやめさせるのが普通。疲れていようと機嫌が悪かろうと、それで他人に迷惑をかけてオッケーってことじゃないんですから。

 すると女性の1人が息子に「ずぼんが白くなっちゃう。汚れちゃうわ」と謝罪を要求した。その言い方は厳しく、息子は半べそをかきながら「ごめんなさい」と謝った。しかし、声が小さくて聞こえなかったらしく、「あなたの子供、謝りませんよ」と、今度は私にも謝罪を要求したのだ。

 やれやれ。その“女性”の台詞が“謝罪を要求”っていうふうにはとれませんぜ。もうちょっと日本語をじょうずに使ってください。まあ可能性としては「ズボンが汚れちゃったじゃないの。ごめんなさいは?」ぐらいか。
 まあその手のことを“謝罪を要求”って表現しちゃうところにこの母親は馬鹿さ加減を露呈してるわけですが、もうね、“子供なんだからしょうがないじゃないの!”精神がスケスケでございます。
 声が小さくてもなにもなあ、そこらへんどうでしょう。ぼそぼそっと子供が「ゴメンナサイ……」とかいってたら、指摘される前に「それじゃ聞こえないでしょ。ちゃんと謝りなさい」とやり直させるのが親ってもんじゃあござんせんかね。
 まあそんなことはどうでもよくて、びっくりしたのがその最後のフレーズ。「今度は私にも謝罪を要求したのだ」。
 それってひどいことかなんかなんですか? そのおばさんたち、間違ってるんですか? 要求もなにも、言われる前に親であるあんたが謝れよって思う俺は心が狭いですか?

 確かに息子が悪いのかもしれない。けれど、注意するにも子供には子供への言い方があるはずだ。息子はおびえた様子で再度謝った。私の子育てを全否定されたような、何とも言えない寂しさが残った。

 確かにもなにも、「かも」じゃなくて、あなたの息子が悪いんです。百パーで悪いんですよ。子供への言い方を要求する前に、あなたがなんとかしなさいってば。1時間半かけて蓮田から横浜まで繰り出して、そりゃあガキは疲れるだろうしぐずるでしょうよ。
 ――だったら行くなっていうんですか!?
 ええ、行くな、ですよ。そんなに行きたければ旦那と子供に留守番させて自分ひとりで行ってらっしゃいな。
 ――9月中旬の晴れた日っていうだけなんだから平日かもしれないじゃないですか!
 知らねえよそんなことは。だって別に、なにかどうしても行かなければならない用事があったわけじゃないんでしょ? 休日に旦那に留守番させるのも、平日にひとりで子供連れで出かけるのも、自分の選択じゃないの?
 ――シングルマザーだったらどうするんですか!?
 だから知らねえってばよぅ。世の中には、親一人子一人で旅して他人に迷惑かけずにやってる人もいっぱいいるんだよ。
 だいたいさあ、声が小さいからもういっぺん謝れって言われたのが気に入らないんだったら「うちの子は謝りました、聞こえないのはそっちの耳が遠いんでしょ」と逆ギレぐらいしたらどうよ(笑)。

 別に問われていないが俺が答えてやる。
 ええ、あんたの子育ては全否定されて当然です。っつうか全否定してやる。
 そんなつもりじゃないのよ、別にあなたの子育てが悪いっていってるんじゃないの、そうね確かに小さい子供には優しく言ってあげないとね、そのおばさんたちの心が狭いわよね、とでも言ってほしいか馬鹿が。
 そういう根性だから、ダメなんです。
 おばさんたちはとても親切だったと思いますがね。どうせ親はやめさせようとしないんだから、迷惑をかけている子供本人に注意したわけだ。しかも、いわゆる「こわいおばさんにおこられるからやめなさい」ではなく「ズボンが汚れてしまう」と具体的な迷惑状況を伝えて。だからやめろと。
 感謝しなさいよ、親として。
 どうせそんな発想はなかったんだろうけど。そんなこともわからずに、子供のしたことなのに(親が言うな親が)キーキー怒られちゃったわ超ムカつく、とでも思ってたんでしょうね。なによ、ふん、とろくに謝りもせず、プーッとふくれたままその場を立ち去り、不機嫌なまま帰途につき(あんたのせいでママ怒られちゃったじゃないの!)、帰ってきても憤懣やるかたなく勢いにまかせて投書。
 馬鹿。そんな馬鹿親の子育ては全否定されて当然です。

 しかしこんな馬鹿まるだしの投書を載せて、朝日新聞はなにをしたいのか。
 もちろん「論争」(笑)ですね。数日後には否定派(「謝るのは当然、なに言ってるんだボケ」)・肯定派(「子育てする母親に優しい社会を」「こんなことだから少子化に拍車が」)とりまぜた反響が掲載されることでしょう。たのしみじゃのう。レベルは低いけど。