なんといっても注目すべきなのは(西)氏だ。
彼が取り上げたのは、ドキュメンタリー1、アニメ1、ドラマ1、バラエティ1、の計4本。バランスのとれた選択だ。押しつけられたのかもしれないが。
番組の紹介はどうでもいいので、それぞれの〈記事の末尾の感想的な部分〉を引用してみる。
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『女たちの京都〜美しい日本に出会う旅〜 ドスペ!』(朝日 11/6)
伝統を守り続ける技と心が、奥行きのある京の風景に浮かび上がる。軽薄なドラマやバラエティー全盛のゴールデンタイムに、しっとりとしたドキュメンタリーを放送しようとする勇気と意欲に拍手を送りたい。
というわけで褒めています。この番組は、千年の都京都でがんばっている女性たちの《生き様と気概》を描いたドキュメンタリーだそうです。生き様って……下品なことばだ。でも(西)氏は平気だ。
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『ブラック・ジャック』(日本 11/8)
番組に関係のない〈自分語り〉を多く使用するのも(西)氏の特徴だ。この記事では冒頭がこれ。
漫画「ブラック・ジャック」を読んでいたのは小学生のころだから、30年以上も前だ。アニメを初めて見たが、子どものころよりも感動したのに我ながら驚いた。
(西)氏は現在30代後半〜40代前半なんだなあ、ってそんなこと別に知りたくもないんですがね。アニメの放送がいつから始まったのか知りませんが、唐突に取り上げたのは《アニメを初めて見た》からなんだろうな。気まぐれな(西)氏はあらすじ(そして登場人物の名台詞)を紹介して、最後をこう締める。
オープニングのテーマ曲「月光花」もかっこいい。子どもだけに見せておくのはもったいないぞ。
そうですか……。おとなに媚びてるのか、こいつ。いいトシして。
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『弟(1)』(朝日 11/17)
これは、あんまりたいしたことないな。5夜連続のスペシャルドラマ(しかも朝日)の第1回めだし、
青春時代の裕次郎を演じる徳重聡、慎太郎役の長瀬智也がこの(引用者注・渡哲也の)存在感にどこまで迫れるか。第2話以降の見どころだ。
と、まあ実に普通。視聴者の興味をひくようにまっとうに紹介し、視聴者がチャンネルを合わせるようにまっとうに勧めつつ締めている。ただしい「試写室」原稿といえましょう。(西)氏らしさがないけどさ。
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『どっちの料理ショー』(日本 11/25)
『弟』で欲求不満だったのか、(西)氏大爆発。『女たちの京都』では《軽薄なドラマやバラエティー全盛》とバラエティに批判的だったくせに、とりあげたのは典型的バラエティ。ゴールデンタイムじゃないからいいのかな。
そして内容。半分ぐらいが(西)氏個人の話だぞ。〈自分語り〉王と呼びたい。
番組では「ご飯がすすむ世界に誇る世界の味」としてサバとカジキを紹介するが、左党にとってはご飯よりも、まずは酒だろう。
たしかにそうだ。俺も同意するよ。うまいもんな。左党にとっては、な。でもあんたの嗜好には興味ないぞ。しかし(西)ちゃんは止まらない。もう〈ちゃん付け〉だよ。
試写用ビデオを持ち帰り、ビールに焼酎を用意。目の前には1匹300円のサバの塩焼きと一切れ400円のカジキの照り焼き。大きさも色も形も厚みも、番組で紹介される逸品とは違うけれど、なに、おいしく食べられれば幸せ気分というものだ。
…………。そうか、持ち帰ったのか。普通は会議室かなんかで黙々と見るんだろうね。でもたまには家で持ち帰り仕事か。つらいよね。残業代つかないのかな。
そして、サバとカジキも揃えたんだね、(西)ちゃん。会社の帰りに買って帰ったんだね。そうか……奥さん、いないんだね、きっと。30代後半から40代前半だけど独身なのか。がんばれよ。きっといい人いるよ。スーパーで買ったサバとカジキを食べながら、『どっちの』の超豪華食材を見るのか。ユニークな発想だな。それをわかってくれる人があらわれるといいね。
《おいしく食べられれば幸せ気分》か……。たしかにそうだけどさ、でも(西)ちゃんが40前後のおっさんだってわかって読むと、ちょっと引くよ。気をつけたほうがいいかも。
酒が進みすぎて酔っぱらい、どっちが勝ったか見逃した。今晩改めて見てみよう。
あげくの果てに、酔っぱらって寝ちゃったんだね。仕事なのに。つーか、なんじゃそりゃ。わざわざ家にビデオ持ち帰って残業かと思いきや、酒の肴か。合計700円の酒の肴をビデオの力で高級特選素材と思い込めるかどうかの実験用調味料か。わびしい生活までかいま見させてくれなくていいってば、(西)ちゃん。
しかし……人材豊富な「試写室」班、ほかにもユニークな評論家がいるのである。
(2004.12.14)
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