January 03, 2007

紅白歌合戦に抗議する人々

 大晦日も年を越してからも、ろくな番組をやっておりませんな。子供の頃は年末・正月のテレビはおおきな楽しみであったわけですが、こちらが歳をとったせいかテレビ局が我々世代向けには番組作らなくてオッケーと思っているせいか、あるいは世間一般の人々と自分自身のウケ・メーターに大きなずれが生じているせいかわかりませんが。

 で、大晦日。格闘技の番組もありましたが、さすがに5時間続けて、煽りやVTRまでひっくるめて見る気はしない。ので、とりあえず録画しておいてあとで飛ばし視聴。ほかにめぼしい番組はなく、教育テレビでやっていた第九などをみたりするわけです。しかし第九ってのもなあ。今年ならばのだめ人気にあやかって七番をやったほうが視聴率いいんじゃないだろうか。そうもいかんのか。なぜ日本では年末といえば第九なんだろう。謎です。

 しかし第九見て年越しってのもニホンジンとしていまいちアレなので(アレって?)、いちおう紅白も見ておくことにする。後半だけみれば義理は果たしたといえよう。誰に対する義理なんだかわからんがな。
 それにしても知らない人ばっかりである。若者うけする歌手のみなさんはもちろんですが、古い人だってよくわからない。若者系の歌手は妙にラップっぽいのが多かったです。あれが流行りなんでしょうか。どうせやるならもうちょっとちゃんと韻を踏めばいいのに。

 ラップといえばDJなわけですが、その名も「DJ OZMA」というひとも見ました。DJと呼ぶにはずいぶん寒い歌でしたがきっとヒットしているのでしょう。私は知りませんでしたが、ナウなヤングには大ブレイク中なのであろうと推察します。
 大勢のダンサーを従えて、たいそうにぎやかな演出でした。さすが紅白、お祭りですから小林幸子の衣装も紙吹雪も舞台装置も、金かけておおげさにやればオッケーです。
 さてその歌(なんという歌か知りませんけど)が進むうちに、ダンサーたちの衣装もくるくるかわっていったりします。女性が上半身裸に――なったかのように見えました。一瞬わたしもびっくりです。理性では「民放だっていまどきかなりの深夜枠じゃなきゃおっぱいポロリはやらないだろう。ましてやNHKが、しかもこんな早い時間にやるわけがない(いや時間の早い遅いは関係なく、NHKではありえないでしょうけど)」と判断しているのですが、それにしては陰影がなかなか。画面に近づいて、それが衣装だということがわかります。会場で見ていたひとは「うあー、脱ぎよった」とか思ったんでしょうかね。そう思えたならばそれはそれで幸せな大晦日だったと思います。

 そんなハプニングともいえないようなハプニング(みそら事件とかマイク倒し事件とかに比べれば、ねえ)の、しばらくののち。総合司会の三宅アナが登場して、なにやら弁明しています。さっきのDJ OZMAの歌でダンサーが裸になったんじゃないかという問い合わせが来たけどそんなわけねえだろ馬鹿あれはボディスーツだったんだよよく見ろボケ、というような内容のものでした。
 えー。
 えー。
 なにそれ。そんなことを、いちいち、電話代払って、問い合わせたり苦情いったりするんですか。
 アホか。そこまで平和かこの国は。

 そして翌朝の新聞には苦情が250件という記事が載りました。
 えー。

「裸」演出、番組内で謝罪 NHK紅白歌合戦(asahi.com:文化芸能)

 31日夜に放送されたNHK紅白歌合戦で、「DJ OZMA」と出演した女性ダンサーの上半身が裸に見えるような演出があり、総合司会の三宅民夫アナウンサーが番組内で「ボディースーツを着用していたが、誤解を与えて申し訳ない」という趣旨の異例のおわびをした。

 NHKによると、終了までに問い合わせなど約250件が寄せられた。NHKは裸に見えたのはすべてボディースーツだったとしたうえで、「裸と見間違いかねない姿になるのは演出側は知らなかった。紅白のテーマにふさわしくないパフォーマンスだったと考えている」とコメントした。DJ OZMAは「リアルに作り過ぎたかな」と報道陣に語った。

 問題の場面は同日午後10時20分ごろに放送された。直後から「裸ではないのか」「ボディースーツとはいえ、子どもの見ている時間にはふさわしくない」などの指摘があったという。

 うわ、つい全文引用してしまったよ。
「上半身が裸に見えるような演出」ね。最後のところでパンツ脱ぐ(股間には飾り。もちろん“ボディスーツ”の上から)演出もありましたけど、そっちはオッケーだったのかな。まああれはもっとあからさまに「うそ裸」だったけどね。
 NHKのコメントもおもしろいなあ。「裸と見間違いかねない姿になるのは演出側は知らなかった。紅白のテーマにふさわしくないパフォーマンスだったと考えている」。紅白のテーマにふさわしいパフォーマンスってどんなんだろう。小林幸子の電飾衣装は紅白のテーマにふさわしいんだろうか。よくわからない。
 苦情電話した人もなあ、「ボディースーツとはいえ、子どもの見ている時間にはふさわしくない」そうだが、その子供ってのが何歳か知らないが、10時20分まで起きていていいんだろうか。大晦日だからいいの? へえ、そういうことなら、大晦日ぐらい裸(もどき)をテレビに出してもいいじゃんか、ねえ。だいたい今時のガキが、あの程度の裸(もどき)をみて驚いたり興奮したり性犯罪に走ったりなんかするもんかい。

 そして年が明けても抗議は続く。

NHK演出大失パイ 「DJ OZMA」に猛抗議750件(スポーツ報知:芸能)

(略)
 抗議は、大みそかだけで約250件。元日になってからも約500件が殺到し、同日午後11時までに計750件。この件数は、NHKの視聴者コールセンターに電話で寄せられたものだけで、つながらなかった場合や地方局などへの電話などを含めると、トータルでは相当数に及ぶことになる。(略)

 ええとなんだかんだで750件。きっと今頃は1000件ぐらいいってるのかね。
 正直、あのパフォーマンスとやらが――たいして面白いものでもなく、幼稚であったとも思うが――そんな問題にするほどのことかは疑問だ。しょせんあの程度のパフォーマンスが去年ヒットして、NHKとしては紅白に出したかったってことでしょ。
 だったらいいじゃないの、偽おっぱいの一つや二つ見せたって。あんたらの子供はそれほどまでに無菌化された環境にいるんですか。もしかしてカトちゃんの「ちょっとだけよ」を見て育った俺らはものすごい変態になっちゃったんでしょうかね。

 それにしても皆さん暇だよなあ。抗議するなら、もっと“抗議すべきこと”があるんじゃないのか。苦情いうべきは、なにかべつのことではないのか。750人とっつかまえて、ぐりぐりと頭を壁におしつけたり耳を引っ張ったりしながら、そのあたりのことを優しく問いただして見たい気もします。
 でもまあ往々にしてそういう皆様は、We are 良識派、I am a 善良な市民、などと思いこんでおり、自分たちがどれだけ恥ずかしいか痛いかみっともないかということには気づかないので無駄ですね。だって彼ら彼女らは“ただしい”んですもん。ただしい自分が非難されることはありえないと思っている。ただしいから恥ずべきことではないと思っている。ただしいことしてるのに嗤われるなんてことはおかしい、嗤ってるほうがおかしい、という理屈が脳内で構築されて、ただひたすら“ただしい自分”に酔い痴れるわけです。なにをいわれても、こたえないのです。しあわせだよなあ。

 いや、ほんと、お正月にふさわしい、おめでたいニュースでありました。


【追記】
そうそう、今年も(去年も、か)SMAPの歌はへたっぴでした。年々下手になってないか、この人たち。そろそろ解散なり活動停止なりして、歌なしのタレントユニットに移行したほうがよいのではあるまいか……。

あけましておめでとさんでございます

 いやはやもう2007年でございます。
 すっかりサボりぎみの当Weblogですが、今年もまあ同じ程度にだらだらと更新することと思われますので、愛想尽きちゃってるかもしれませんが、見捨てたり見捨てなかったりでどうぞ適当によろしくおねがいしますね。