May 02, 2005

Zingaro

 なにやらずいぶんな鳴り物入りで3月12日から5月8日まで上演。朝日新聞でのタイアップ記事や広告、劇評を見て行こうと思ったわけですが(もちろん朝日新聞社ほかの主催、共催はフランス大使館、特別協賛はエルメス)、高い。24000円から8000円。私はS席14000円のチケットをとりました。北Cブロック11列。円形劇場なのでどこに座っても大差ないのかもしれませんが、ほぼ正面で、演奏者たちを左右に見渡せる位置だったので悪くはなかった。

 曇り空の下、地下鉄大江戸線清澄白河駅から延々と歩いて木場公園。深川めしが名物らしく、商店街には食堂らしき店がちらほら。おなかすいてきたけど、まあいいや。
 日曜だったので開演は5時。会場は3時半だが、ついたのは4時半ぐらい。現代美術館のある公園の中に特設シアターがそびえている。
 チケットを切られたあとは土産物屋さんのプレハブへ自動的に進むことになっております。飲食もできるようでしたが、あの混雑じゃあその気分にもならず。チョコレートだのTシャツだのDVDなどいろいろ売ってるようでした。パンフレット(3000円也)のみ購入。噂のエルメスショップの品揃えはこんな感じ。さすがエルメス、高いっす。 
 観客を見回してみると、騎馬オペラのオペラ部分に惹かれた人はオペラ仕様で、騎馬部分に惹かれた人は曲芸(曲乗り)仕様で来ていたような気がした。ちぐはぐというか。でも足元がけっこう不安なので騎馬派のほうが正解(笑)。

 開演15分前になるとゲートに誘導され、座席への案内を待つことになる。これが3階分ぐらいの高さに位置しているため、建設現場みたいな(そこまでひどくはないが)階段をあがっていくことになる。ゲート前で待っていると、おそらく馬たちが出入りする際に通るのであろうと思われる砂敷きの通路が眼下に。ああ蹄のあとが。けっこう大きいのだな。

 さて各馬ゲートイン、じゃなくて観客入場。
 なかは薄暗い。というより真っ暗に近い。中に入ってもまだ階段があるので、かなり注意が必要。演出の都合上仕方ないということなのだろうが、危ないよなあ。階段をのぼり、さらに折り返してのぼり、今度はくだって着席。え、パイプ椅子かよ。仮設劇場だから仕方ないのか。なんでも仕方ないことばっかりだなあ。
 シートの位置そのものは悪くない。円形の舞台(馬場というべきか)を見下ろすようになっているので、どの席からでも見えないということはないだろう。お椀が伏せられたような(蝿帳みたいな!)ドームが設置され、周囲を人がのたくっている。おお、これが《五体投地》というやつか。でも、ここでみるのとはすこし違う。いちど完全な腹ばい状態になっている。しかしこのGIFアニメ早すぎ(笑)。そうそう、こちらにある写真の雰囲気のほうが近い。舞台と客席を隔てる低い壁のような部分を、お香をもった人が歩いている。どこからか聞こえてくる声明。お香と声明で気分はお通夜(ちと違う)。
 録音・撮影の禁止につづいて「拍手の禁止」のお達し。チベット僧に敬意を表して、とのこと。馬のためじゃないのね。馬がおどろくから、っていうならわかるけどなあ。

 演目は『ルンタ』、チベット語で「風の馬」という意味だそうだ。
 で、ステージ。もうあと数日しかないから書いちゃうが(これからみる人は読まない方がいいかも)、馬の呼吸とまではいかないが、例の「ぶるるるるるん」が聞こえるのには純粋に感動した。とても綺麗な馬たちでした。どこかからは「グァグァ」とアヒルだかガチョウだかの声が聞こえてくる。録音だと思ったら違ったよ。
 前半はゆったりとしたパートがおおかったので、眠くなってしまったのは確か。ついうとうととしてしまった。音も単調だしね。
 でもロバやガチョウ(アヒル? どっちなんだろう。アヒルにしては大きいように見えたけど、馬がそんなに大柄じゃなかったからアヒルなのかな)がユーモラスな演技をするころになると覚醒してきた。
 インターミッションふうに乗り手が客席からあらわれて、舞台のふちで着替えを始め、大曲乗り大会になると、もう息をのんで見つめるしかない(このあたりのパーカッションのかけあいのような演奏もよかった)。これで拍手するなというのはつらいぜ。
 そして、あれよあれよという間にフェイドアウトするように終了。
 もっと馬の走りをみていたかったなあ。あんなせまいところ(直径30メートル)をあのスピードでぐるぐる走り回ったり、踊ってみたり、馬さんすごいです。それをやらせた人間もすごいんだけどね。
 終わった頃には雨が降り出し、コンディション的にはイマイチでしたが、珍しいもん見せてもろたという感じ。チケットは高いけど、馬やガチョウ(もしくはアヒル。どっちなんだよう)を連れてきて、彼らの滞在する環境も整えなきゃならないんだからしょうがないかな。きっと一番安い席でも楽しめたと思う。次、いつ来るかわからないしねえ。
 最後はちゃんと拍手できたけど、馬たちにはその賞賛は聞こえなかっただろうな。人間しかいなかったから。聞こえてもうれしかないだろうけど。演奏チームのチベット僧たちも立ち上がってニコニコしてたんだから、やっぱり「チベット僧に敬意を表して」というのは違う気がする。ダライ・ラマだってそんなこと別にかまわんすよとかいいそうだ(どういう根拠で)。
 チベットについてはいろんな本がありますが、庶民の生活については渡辺一枝『わたしのチベット紀行』(集英社文庫)あたりがおもしろかった。あとは河口慧海『チベット旅行記』ね。これは傑作。いや全部読んだわけじゃないんだが。去年ダイジェスト版の『チベット旅行記 抄』(中公文庫BIBLIO)が出たのでちょうどお手頃かも。
 映画なら『セブン・イヤーズ・イン・チベット』が定番なのかもしれないが、ここはあえて『クンドゥン』をおすすめしたい。

 と、話はずいぶんジンガロからそれてしまったが、興味をもった人は以下のサイトをみてみると楽しいかもしれません。

コメント

TBありがとうございます。
あの子たちはガチョウです。
お楽しみいただけたようで良かったです。

Posted by: しのぶ : May 5, 2005 12:31 AM

ジンガロ行かれたんですか。
私とは違う視点で見ていらっしゃるので、記事を読んで
なるほどと思いました。
ちょっと話はそれますが、
馬のポテンシャルを再発見すべく、今度競馬に行こうと考えています(^^;

Posted by: iimk : May 5, 2005 03:06 AM

しのぶさま。
コメントありがとうございます。リンクまでしていただいてしまって。
あのひとたちは、やっぱりガチョウですよね。検索するとアヒルと書いてる人が多くて不安なのでした(笑)。これで安心できます。どこまでが“予定されていた(訓練による)行動”でどこからが“エサによる誘導”なのか、興味深かったです。

iimkさま。
会場の段取りの悪さには同意です。劇場を特設しなければならないのはわかるし、客を早くから入れるわけにはいかないのもわかるんだけど、ちょっときついものがありましたね。雨の日の客入れはどうしたんだろうと、人ごとながら心配になりました。
パフォーマンス以外の部分で印象を悪くするのはとても残念だと思います。
競馬、がんばってください!

Posted by: ぱと : May 5, 2005 03:29 AM

トラックバックありがとうございました。

私が行った日はお天気が良かったので気がつかなかったのですが、
たしかに雨の日の劇場への移動はつらいかもしれませんね。

なかなか観る機会のないものなので、行けてよかったです。

Posted by: いろじろ : May 5, 2005 11:06 PM

いろじろさま。
コメントありがとうございます。
天気と、あとお年寄りっぽいかたには、駅からの歩き+混雑してるウェイティングスペース(もう少し椅子があっても?)+階段のぼり、の連発はけっこうキツいみたいでした。階段でへたりこんじゃってるおばあさんを見かけたし。
でも面白かったですよね。いろじろさんのエントリーは、とくに「馬乗り的感想」が興味深かったです。乗ったことないもので。いつか乗ってみたいなあ(←動物虐待になるおそれあり)。

Posted by: ぱと : May 6, 2005 03:44 AM

ぱとさん、こんにちは。

そっか、雨が降っていたら駅から歩き→カフェは混み混み→さらに階段
ですもんね。仮設劇場の宿命ですが、たいへんだ。

「馬乗り的感想」楽しんでいただけて嬉しいです。
ぱとさんも、一度ぜひ乗ってみてくださいね。

Posted by: いろじろ : May 6, 2005 12:17 PM

いろじろさん、こんばんは。

今日あたりの天気だと、どうだったんでしょうねえ。
みんなぎりぎりまで待合室(室じゃないか)で待っているだろうし、階段のところに人が集まりすぎても危険だろうし。開場してしずしずと入場するのでしょうが、そうすると開演が遅くなっちゃいそうですね。生き物をつかうというのはそういう苦労もあるんですねえ。

馬は、一度乗ってみたいけれど……馬がつぶれちゃいそうで(泣笑)。
乗馬の体重制限ってあるんでしょうか。

Posted by: ぱと : May 7, 2005 01:54 AM

乗馬の体重制限、あまり厳しいことは言われないようですが、
私の通っているクラブでは、一応「100kg以上の方はちょっと...」
ということになっているようです。
とはいっても明文化された決まりではないようですし、あまり
お気になさらずとも大丈夫だと思いますよ。

Posted by: いろじろ : May 8, 2005 11:06 PM

いろじろさま。
そうですか100キロ以下なら大丈夫なんですね!
お相撲さんは難しそうですねえ。モンゴルあたりの人(たとえば朝青龍とか)は日本でも馬に乗りたいーと思っていそうですが。
これ以上体重が増えないうちに体験乗馬、してみたいです。
まあ最悪、馬車でもいいか……いや、いよいよとなればタイに行って象に……(←なんか話が違う)。

Posted by: ぱと : May 9, 2005 01:23 AM

以前TVで、旭鷲山関が乗馬をしていたので(さすがモンゴル出身?)
けっこう大丈夫なんだと思います。

Posted by: いろじろ : May 9, 2005 12:07 PM

モンゴルでの乗馬のようすをレポートされているページをみつけましたよ、いろじろさん!
http://www.gld.mmtr.or.jp/~shiho/homepage/mori.htm
系統としては道産子に近いんでしょうかねえ。がっしりしてます。旭鷲山は142.0kgだそうです。でもきっと馬になれてるというか気合いで乗っちゃうに違いありません。馬のほうも、「あれ、なんか重いかも。ってゆうかいつもより全然重いかも。でもなあ逆らうと怖そうだしなあ。まあいいか、ほんとは100kgなんて余裕だし。でもこれがデフォルトになるといやだなあ」とか思ってるんだと思います。

Posted by: ぱと : May 9, 2005 01:24 PM
まあ気楽にコメントしてくれたまえ。もうしわけないが、スパムが多すぎなのでコメントは管理者の承認後、掲載される。まあ気長に待ってくれたまえ。









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