June 25, 2004

人名漢字・その後

読売新聞に「日本語の現場」というコラムが連載されている。6月23日からの3日間は「特別編」として人名漢字追加案が取り上げられている。で、今回の追加案提案についての裏側というか仕組みがちょっとわかったので紹介しておきたい。



まずは選択された漢字の根拠。

 追加案で「糞」「呪」といった漢字が候補入りする根拠になったのは、二〇〇〇年三月にまとまった文化庁の漢字調査。三百八十五の出版物に掲載された漢字を数え上げたもので、法務省では、二百回以上登場した漢字を機械的に選び出したという。(6/23「日本語の現場 特別編 人名漢字[上])

てなわけで《二百回ならざっと半分の出版物で最低一回は使用された計算》になるんだそうです(法務省民事局の自見武士さん談)。このかたも《人名にふさわしいかどうか考えていません》と豪語されておられる。いやだからそれでなんで人名漢字の追加案といえるのか。

で、その385の出版物はというと……。

ステッドマン医学大辞典、法令用語辞典、法然辞典、現代保育用語辞典など辞典は十六冊。単行本には、「農技大系」「刑法総論」といった専門書のほか、司馬遼太郎や橋田寿賀子など人気作家の作品や「ベネチアの誘惑」「凌虐の町」なんて題名の本もある。雑誌の「壮快」「問題小説」「仏教芸術」や古典の「源氏物語」も含まれていた。(6/24 人名漢字[中])

なんだか……偏ってませんか。
法律、医学、仏教が多いような気がする。まあ385のうちの一部だからそればっかりとまではいえないけど、リストを見て目立ったからこのコラムの執筆者も取り上げたんだろうな。それにしても……「医学辞典」「壮快」とくれば《癌》も《腫》も《疹》も入ってくるわなあ。
凌虐の町」(きいたことないなあと思って調べてみたら……西村寿行でした)や「問題小説」ならば《淫》も《姦》も多そうだし。
つくづく、増やせばいいってもんでもないなあと思うのでした。

じゃあ現代の親たちは実際にどういう名前のつけかたをしてるのかというと。

「とにかく独創的な名前をつけようという思いだけが強い傾向も見受けられるので、そのおそれは十分にあります」(6/25 人名漢字[下])

と語るのは「たまごクラブ」の編集長鹿妻英子さん。《強い傾向も見受けられる》ってなんじゃい。《強い傾向がある》でいいじゃないか。
あ、《そのおそれ》っていうのは前段にある《不用意な漢字を使えば、わが子の名が、とんでもない意味を持つ結果を招きかねない。》というコラム筆者の文を受けてのことです。

それはさておき。
漢字を探すときに辞典を使うんじゃなくて携帯電話を使うんですってよ。そりゃ驚きだ。だから無茶な漢字の使いかたしても平気なんだな。

「若い世代にとって漢字は“感字”です。意味は二の次。目新しい字に飛びつく人も多いのでは」(6/25 人名漢字[下])

まあそうなんだろうなあという気もします。が、育児雑誌編集長としてそんなひとごとみたいな言いかたはどうよ。「たまごクラブ」で《ただしい名付けかた・漢字の選びかた特集》でもやってみてはどうか。「漢字を選ぶときは、携帯電話の変換機能ではなく辞書をひきましょう」「漢字にはそれぞれ意味がありますので、子供の名前が変な意味をもたないように注意しましょう」「外国風の名前をつけても、パスポートに書かれるのはローマ字です」などなど。

無理だろうな。
まあいいんだけどさ。

だんだんどうでもよくなってきたよ俺は。
とりあえず読めりゃいいさ。たとえ「呪吏亜」と書いて「ジュリア」と読ませようとも(ああ、でもやっぱりイヤだなあそれは)。しかし「美貝」と書いて「ミシェル」と読ませるようなとんちクイズはやめてほしいと思う今日この頃です。もちろん呪吏亜も美貝も架空の名前です。ほんとにいたらどうしよう……。

ま、とにかくコラムにあるように、

 知識の裏打ちがなければ、珍名を量産するだけに終わるのではないか。(6/25 人名漢字[下])

ということに尽きますね。幸いワタクシの周囲には、そんなヒドい名前をつけられた子供がいないので(あらら〜っと思ってしまう名前って、テレビ新聞雑誌でしか見ない)よかったよかった。

【参考リンク】
法務省
審議会第1回(3/26)審議会第2回(4/23)審議会第3回(5/13)審議会第4回(5/28)
戸籍統一文字情報
見直し案

投稿者 percent : June 25, 2004 05:43 PM | トラックバック (0)
コメント

へその緒を巻いて産まれた子には、名に「袈裟」とつけなければならぬ
という風習のある地域があり、その地域には「袈裟男」とか「袈裟代」
という名前の人がワンサカいるという話を、むかし読んだことがある。
すげえ名前だと当時は思いましたが、いまでは「袈裟」もなにやら神々
しく感じられますなあ。
ちなみに、わたしの友人の子に「きらら」という名前の子がいます。
女の子です。謂われは知りません。
平仮名です。「雲母」とは当てません。

Posted by: P柿 : June 25, 2004 06:32 PM

キララ……お米の名前にもありましたな。最近ではさほど異様な名前じゃないのかもしれない。サンリオのキキ・ララとは関係……ないんでしょうなあ。

Posted by: ぱと : July 7, 2004 03:00 AM
まあ気楽にコメントしてくれたまえ









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