April 18, 2008

入学の条件

 新聞の一面に、その日のトピックじゃないが注目すべき記事が紹介されている欄がありまして、そこに、

[教育]未納理由に処分、賛否両論(「朝日新聞」2008.4.16朝刊)

 てのが紹介されてて、びっくりしたんですよ奥様。
なんでびっくりかっていうと、そりゃもう“なんでそんな記事が載ってるの?”と思ったからであります。

 話は日曜ぐらいまでさかのぼるのですが、テレビのニュースでちらっと報道されてたんですね。最初に気づいたのはそれだった。けど、ちゃんと認識はしてなかった。

 で、翌月曜の夕刊にこんな記事が載ったわけです。

入学金未納の新入生2人
入学式に出席させず 千葉の県立高(「朝日新聞」2008.4.14夕刊)

 という見出しであります。“あはは、もう馬鹿もきわまれりですなあ。見せしめ結構。どんどんやれやれ”と思いながら読んでいく。

 要するに、とある千葉の県立高校が、

入学金を納めなかったことを理由に、入学式に新入生2人を出席させなかった

 わけです。
 いや、当然だと思うんですけどね。そんな当たり前なことはニュースにはならないわけで、それに対する批判があってこそ記事になる。

県の公立高校教職員組合は「経済的な問題と教育の問題は別。入学料を減免するなど柔軟な対応をしてほしい」と堂本暁子知事に要望書を出した。

 まあそういうことだ。教職員組合が動いたからニュースになったわけですな。
 さらに記事は続く。

新入生159人は8日の入学式当日、入学金5650円や教材費、授業料など計9万円を納めることになっていた。だが、2人が未納だったため保護者に連絡したところ、「後日支払いたい」「お金を持ってきていない」と話したという。

 この保護者はいったいどういうつもりだったんだろうか、というのがまず疑問。個人的にはそっちを取り上げてほしい。我が子の高校入学に際して、たかだか9万円を用意できない、あとで払うからといってなんとかしてもらおうと思う、そういう発想はどこからくるのかという記事が読みたい。

 だって、

合格証書を送付した際、入学式当日に入学金などを納めるように説明書を同封し、さらに、3月17日の入学者説明会でも連絡した。

 っていうんだから。

「持参するお金は一部でもいい。分納もできるので、経済的な心配があれば事前に相談してほしい」

 って伝えてあるんだから。いやあ、親切だなあ。必要にして充分な措置でしょう。
 で、その説明会には2人の保護者も出てたのですよ。
 それなのに、入学金を持参すべき当日、金はない、と。それじゃあ入学はできないでしょう。高校は義務教育じゃないんだしね。受験で合格することだけが入学要件ではないわけで、入学金や授業料を支払うことも、高校に入学する条件だと思うんですが、ちがいますか。

 ま、そんなわけで、ひでえ親をもった子供は気の毒だなあと思ったわけです。さすがにヤバいと思ったのか、保護者は入学式のあとに入学金を払ってめでたく入学できましたとさ。
 ──約束は守ろう。
 ってことを身を以て知ったわけですね。高校で学習するようなことじゃないと思いますが。っていうか、保護者を教育してやる義理もないわけですが(笑)。

 そしたらその2日後。冒頭にあげた、けっこう大きな記事が掲載されたのでした。
一面の紹介記事をみて、びっくりした、ってことは最初に書きました。どこにびっくりしたかというと、「賛否両論」ってところ。賛否の否って、なに? 高校は入学金払わない生徒を入学させるべきである!っていう人がいるの? まさかねえ。

 で、社会面をみてみましたよ。

入学金未払い 式に出させず
学費未納 苦しむ現場
総出で家庭訪問■バイト指導■退学勧告も(「朝日新聞」2008.4.16朝刊)

 というのが見出し。例の一件を「問題の経緯」として紹介しつつ、全国のほかの公立高校ではどうしてるかというレポートのような記事になっています。

 いやあ、どこも大変なのね。あちこちの似たような事例や対策のための条例などを紹介しています。授業料を滞納したら出席停止や退学勧告が出せるようにした、という事例が多い。ほんとに払わないやつらが多いんだな。
 おかしいのは、滞納して支払う意志も見せないやつには簡易裁判所に申し立てをするって決めたら、それまで33か月分滞納してたやつ(卒業生)が毎月5千円ずつ支払うことにしたって話。33か月って……3年間のほとんどじゃん! 千葉県も、滞納者を出席停止処分にできるときめたら、授業料滞納が減ったんですってよ奥様。

 要するにだ。
 簡易裁判だ出席停止だ退学勧告だと、じぶんの立場があやうくなるようなシステムになっていればしぶしぶ払うわけですね。携帯電話代はなにをおいても払うのは、払わないと使えなくなるから。授業料は払わなくても「早く払えよー」と言われるだけだから払わない。幼稚というか馬鹿というか……。

 大阪の府立高では、常に20〜30人(!)が授業料を滞納しており、担任教師が電話したり手紙書いたり家庭訪問したりして説得し、あるいは減免制度を紹介しているのだそうだ。
 呆れちゃうよなあ。それって、教師の仕事か? そういうことに教師の時間や労力を向けなければならないってことは、当然そのぶんの授業がないがしろになるわけだ。そのマイナス面を押しつけられるのは、ちゃんと授業料を払っている生徒たちなわけだよなあ。

 なんかアレと似てますな。給食費を払わない馬鹿親。
 あれも、給食費不払いがふえることで給食の質が落ちたり、給食費が値上がりしたりする。そういう迷惑をこうむるのは、ちゃんと支払っている(親の)子供たち。

 子供に責任はない、入学式に出してあげないのはかわいそう、という意見をちらほら見聞きしますが、それは全然違うと思うんだなあ。
 たしかに子供に直接の責任はないかもしれない。だけどもう15歳でしょう? 自分の意志で高校に行こうとおもったわけだよねえ? だったら、自覚をもって、《入学式の当日に必要な金》を親に求めないといけないと思うんだよね。万一、家庭の経済状況が──というようなことがあれば、じぶんで調べて減免制度を申請してもらうとか。親がケチなだけだったらば、卒業後働いて返すから出してくださいと土下座するとか。
 親に頼ってちゃだめだ。じぶんを守らないとね。

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