March 08, 2008

上司は思いつきで酒に誘う

 先日、新聞の経済欄をみていたら、こんな記事があってびっくりした。

管理職に「部下手当」導入へ 日本綜合地所

 マンション分譲大手の日本綜合地所(東京)は4月から、管理職を対象に部下との会食や冠婚葬祭の費用として「部下手当」を導入する。お金の心配をせずに、部下とのコミュニケーションを積極的に図ってもらう狙いだ。
 支給対象は副課長以上の約60人。毎月の支給額は部長級で部下20人以上が30万円、19人以下が20万円、課長、副課長は10万〜15万円。通常の給与の一部として支給するが、手当との位置づけを明確にするため、給与とは別の口座に振り込むという。
(asahi.com:就職・転職:ニュース/2008年03月04日)

 なんとまあ、部下と一緒に飲食したりするための「手当」を支給する会社があるというのだよお立ち会い。上記はアサヒコムからの引用だが、毎日にもあった。


部下手当:管理職に支給 部下との会食に…日本綜合地所

 日本綜合地所は3日、部下との付き合いを円滑に進めるため、管理職に月10万〜30万円の「部下手当」を4月から支給すると発表した。会食費や冠婚葬祭費に充ててもらう。
 部長級23人と、それ以外の管理職(副課長から次長)39人が対象。支給額は、部長級で部下が20人以上の場合で月30万円、19人以下は月20万円、それ以外の管理職が月10万〜15万円。通常の給与振り込み口座とは別に、専用の口座を設けて、特別の手当であることを明確にする。
 日本綜合地所はこれまで、取引先との付き合いなどは経費として処理できていたが、社内の飲み会は自己負担だった。今回の手当導入で年1億5000万円の負担増となるが、同社は「部下とのコミュニケーションに役立ててほしい」としている。【後藤逸郎】
(毎日jp:ニュースセレクト:話題/毎日新聞 2008年3月3日)

 朝日よりはもうちょっと詳しいですね。そしてAFP通信も報道している。

マンション分譲の日本綜合地所、部下との会食に管理職手当

【3月5日 AFP】深夜の飲み会は理路整然とした会話を不可能にする。だがマンション分譲大手の日本綜合地所(Japan General Estate)は、飲み会は社員同士のコミュニケーションの円滑化にとって大切な手段だと考えている。そのためには、管理職に特別手当を支給することすらいとわない。
 同社は3日、管理職を対象に部下とのコミュニケーションの場を設けるための費用として「部下手当」を導入すると発表した。
 日本の企業は従来、顧客接待のための費用は潤沢に確保してきた。日本綜合地所の「部下手当」はそこからさらに踏み込んで、従業員同士の会食の機会を増やすのが狙いだ。
 新制度では部署長を対象に、部下人数が20人以上なら月々最大30万円、19人以下なら20万円を支給する。
 日本の企業社会では、職場の雰囲気改善のために就業時間後の飲み会が奨励されてきた。だがそうした風潮こそが、特に男性社員が自宅で過ごす時間を減らし、ひいては人口減少につながっているのだと指摘する声もある。
 日本綜合地所の「部下手当」は、普段の飲み会の費用だけではなく、冠婚葬祭などへの支出を援助する意味もあるという。同社はほかにもユニークな制度を導入していることで知られており、たとえば、たばこを吸わない社員には10万円が支給される。
(AFP:経済/2008年03月05日)

 こちらはさすがに外国の通信社だけあって少子化までもってきてシニカルなかんじ。

 さて。
 どうだね部長課長のみなさん。月々20万だかが給料に上乗せされて、部下に奢ってやれという話なわけじゃが(冠婚葬祭なんかもありますけどね、やはり日常的に多いのは飲食でしょう)。
 困っちゃうねえこれは。きっと。「A部長は先月、手当を使い切ってさらに持ち出しになったってよ」「へー、それにくらべてうちのB部長はケチだねえ」「ほんとほんと、手当そのままキャバクラに流れてんじゃねーの」などといわれるわけですよ。いや、いわれるかどうかわからんが。
 俺だったらこわい。ケチといわれるのもこわいし、部下のご機嫌とりチックに「いいんだいいんだ俺には手当があるからまかせとけ!」なんて豪語して深酒するのもイヤなかんじだ。

 そして、どうだね平社員のみなさん。部長からおごってもらえるからラッキー、ですか? そうか? ほんとにみんな部長課長と呑みたいのか? そうなのかなあ。
 いや、ぜんぜん縁のない業界だから雰囲気がどんな感じなのかわからんですけどね、頻繁にみんなで集って、チームの結束を図ったりとかしてるのかな。
 仕事上必要な呑み会とかならいいんだ、しょうがない。だけどさ、「部下手当があるからさあ、呑みにいこうよ××クン」「キミらに呑ませることは俺の業務の一部であって、そのために手当も支給されておるのだよ」とかいわれたらウザいだろうなあ。酒呑めないのに無理矢理呑まされたりして。いないか、そんな上司。

 だいたいほら、美しい日本の従業員交流といえば、「たまにはみんなで呑みにいくか」「いいすねえ」「いきましょういきましょう」ときて、軽く呑んで、「ここはまかせろ」「すんません課長、ごちそうさまです」とかなんとかいって、「じゃあ俺は帰るから。お先に。あとは若いもんだけで盛り上がれ。っつっても明日遅刻したら罰金だぞ」「ありがとうございましたー」「おつかれさまでしたー」「おう、みんな、課長が一万円、二次会の足しにしろって置いてってくれたぞ」「おー、さっすがー。じゃあカラオケいこうカラオケ」なんつうことになって、翌日「課長、昨日はごちそうさまでした」「あ、いいんだよんなこたぁ。それよか仕事しろ仕事」「はいっ」みたいなサラリーマン物語がイメージされるんですけどね。
 ポイントは《たまに》《軽く》《お先に》ですね。
 そらまあ課長は大変ですな。居酒屋で軽くっつったって人数が多ければ負担額も増える。全部をおごらなくても、3万なら1万は払って残りを頭割りとかそんな感じ? んで二次会用にとかいって1万。計2万。そんだけあったらキャバクラほにゃららのミユちゃんに会えたのになあとか思いつつも、しゃあねえな、俺も若いころは上司におごってもらってたしな、とかつぶやきつつ帰宅してお茶漬け。

 それは確かにしんどかろう。
 だけど、それを手当として明確に「こんだけ、部下とのつきあいように出すからね」っていわれると困ると思うんだな。だったら普通にその分給料あげろよって思う。本給に組み込むなんてことしたら退職金やらなにやらにまで響いてきて、そりゃ大騒ぎだけど。
 じゃあ普通に役職手当に上乗せするんじゃいかんのかねえ。気の毒だなあ部長課長のみなさん。なまじ別立て、別口座なんてことしたらかえって波風が立ちそうだ。そんで使う額が少なければケチといわれるんだぜ。いっしょうけんめい手当使い切ろうとして肝臓こわしたりして、さらにウザがられたりして。
 そして部下のみなさんもお気の毒に。きっとね、上司と呑むなんてウザいんだから、そんなもん上司が家に持って帰ってローンの足しにすればいいって思ったとしても、実際にそうされたらちょっとムッとすると思うんだ。かといって、毎週毎週、月に20万の手当を使い切るために呑みに誘われたらそれはとってもとってもウザいと思うんだ。

 放課後までそんなことしなくたって、ねえ。仕事おわったあとの呑みぐらい、自由にさせてよ。


投稿者 percent : March 8, 2008 12:01 AM | トラックバック (0)
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コメント
まあ気楽にコメントしてくれたまえ。もうしわけないが、スパムが多すぎなのでコメントは管理者の承認後、掲載される。まあ気長に待ってくれたまえ。









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