April 09, 2004

カイニン問題

昨日、いやもう一昨日だが、朝日新聞の夕刊に辻仁成がコラムを書いていた(04/4/7)。文化欄のかなり大きなスペースだ(記事部分の三分の二ぐらい?)。
内容は、フランスで子供が産まれてどーのこーのから始まり、テロだイラクだという時事問題にうつり、最終的にまた子供の話に戻って……という、わかったようなわからんような、全体的に目が滑っちゃうような話。わざわざ取り上げるほどのことでもない。
のだが……。

記事はこう始まる。

 一月、妻がパリ市内の小さな産院で男子を出産した。渡仏後すぐに妻の懐妊が分かり、私たちはフランスで子供を生み、育てることを決めた。

え……。《妻の懐妊が分かり》? 岩波の国語辞典を見てみる。

かいにん【懐妊】 《名・ス自》はらむこと。妊娠。▽自分・身内には「身ごもる」と言っても「懐妊」とは言わない。 [岩波国語辞典第六版]

そうだよなあ。《ご懐妊》なんていうとやんごとなき方面な感じがするし、一般人には使わないだろうと私なんかは思うのだが、百歩譲って《お友達のなんとかちゃんが懐妊して》《だれそれさんの奥さんがご懐妊で》っていうのもアリとしよう。週刊誌で《ミポリン懐妊!》なんて見出しもよしとしよう。
しかし。しかしやっぱり、自分の妻の妊娠を《懐妊》というのはまずいだろ。
なんというか……そこはかとなく、いや、かなりはっきりとバカっぽい。頭悪そうだ。
そんな前振りでイラク情勢を語られてもなあ。
そのうえ顔写真は、むかしの連合赤軍のハイジャック犯人みたいにあやしげだし。

いちおう芥川賞作家なんじゃなかったっけ、この人。こんな日本語でもいいのか芥川賞は。おそまつすぎやしないか。大きなお世話だけどさ。

(2004/4/13追記)
日本国語大辞典第二版」(小学館)を引いてみた。

かい-にん【懐妊・懐姙】《名》子をはらむこと。みごもること。妊娠。懐胎。懐腹。懐孕(かいよう)。*家伝(760頃)上(寧楽遺文)「汝児懐姙之月、与常人異、非凡之子、必有神功」*観智院本三宝絵(984)中「我は救世〓也。家は西方にありといひて、をどりて口に入ぬとみて懐姙し給へり」*今昔(1120頃か)二・三一「他の男に娶(とつぎ)て懐任しぬ」*平家(13C前)三・赦文「御悩(ごなう)ただにも渡らせ給はず御懐姙とぞ聞こえし」*蔭凉軒日録-延徳三年(1491)三月一五日「当七日之暁腹中有苦、帰洛。諸医云、懐人之脈也」*咄本・私可多咄(1671)一・一〇「くいにんの女、ふなをくへば子がおるるといふ事を人にならひて」*浄瑠璃・用明天皇職人鑑(1705)四「姫がくいにん月重なっては世間の聞へ、恥を招くと云物也」*「晉書-何曾伝「以懐姙繋獄」[方言]妊婦。広島県安芸郡783 (以下略)

はあはあはあ。
漢文記号、ええとなんつったっけか、ああそうだ返り点。返り点は省略してます。てきとーに打ち込んだのでミスがあったら失礼。せっかくコピーとってきたんでデータっつうことで。

ってゆうか追加するより別項立てたほうがよかったような気もしてきた……。

まあいいや。てなわけで、鮒食って堕胎したりするのはどうかと思うが、ごく一般的に使われてるっぽい。ちぇっ。しかしやっぱり「身内には言わない派」は細々と続けていきたいと考える次第であります。

【参考リンク】
虫の居所」(ならのさん)の婆臭い言語感覚?こちらでもカイニン問題

トラックバックもしてみよう。これでいいのかな?

投稿者 percent : April 9, 2004 02:52 AM | トラックバック (1)
コメント

コメントするのはいいんですが、このコメントは
どこへ行くのでしょうか?

Posted by: P柿 : April 9, 2004 04:34 AM

あっ、ここに表示されるんですね。

Posted by: P柿 : April 9, 2004 04:35 AM

おお、コメントありがとうございます。
宜しくお願いします。

Posted by: ぱと : April 9, 2004 06:13 PM

で、懐妊ですが。

本文で引用した「岩波国語辞典(6版)」はシステムソフト電子辞典のもの(ATOKについてきた)。冊子版の「岩波国語辞典(4版)」には《はらむこと。妊娠。》とあるだけで、身内云々の補足はなし。エルゴソフトEGBridgeについてきた「大辞林」だと《子をみごもること。妊娠。懐胎。「御―」》。
漢和辞典はどうかというと、「大修館新漢和辞典(三訂版)」では《=懐胎》。懐胎は《みごもる。子をはらむこと。》だけ。
うーむ。
まあ懐にも妊にも尊敬語的な意味合いは含まれてないだろうから、単に妊娠・懐胎と同義語ということなのか。しかし「聖母マリアの《処女懐胎》」とか「雅子さま《ご懐妊》」とか、懐をつかってるほうが、ちょっと特別っぽい?(そ、そんな……)

とはいえ、記事の冒頭をパッと見たときの違和感というかイヤ感は、個人的には強烈だったんすよ、ってことでひとつ(なにが?)。

Posted by: ぱと : April 9, 2004 06:50 PM

なるほど…

Posted by: こたま : April 10, 2004 04:47 PM

あやしい言葉を使っても、読んだ人にひっかかりを持たせないだけの人徳やなんやかやが、じんせーには足りないと思われ。
彼の人徳のせいではなく、私の心の狭さのせいであるとも言う。かも。でも、もっと心が広かったとしても、やっぱりじんせーは受け入れてやんない。

Posted by: まちゅ : April 12, 2004 12:12 AM

しかしミ○リンも女下げたよなあ。
けっこう好きだったんだけど……

Posted by: P柿 : April 13, 2004 05:48 PM

ミ◆リンといえば今週の「週刊現代」巻頭がなつかしアイドル特集だったんですが(当然当時の写真)、かわいかったな。ほかのアイドルよりかわいかった気がする。けっこう普遍的な顔なんだろうか。

Posted by: ぱと : April 13, 2004 06:19 PM

ってそういう話じゃなくて、日本国語大辞典の語釈を本文に追加しましたよという話です。

Posted by: ぱと : April 13, 2004 06:21 PM
まあ気楽にコメントしてくれたまえ









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